「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第22話

「あまりにも私に都合のいい条件ですね。
何か裏があるのではありませんか?
だまされるのは好きではありません。
全てを話してください。
そうでなければ、表向きがどれほど好条件でも、受けられません」

「閣下ならそう言われると思っていました。
私が話せるのは、私は実家から監視されているという事です。
実家の判断ひとつで、理不尽に殺される可能性もあります。
それを防ぐには、実家の継承には何の興味もないと思わせなければなりません。
同時に、それでも刺客が放たれた時には、撃退する戦闘力が必要です。
そのために、爵位と領地が必要なのです」

フェルドナンドの話は、一見筋が通っているように思われます。
フェルドナンドは王家、いえ、皇室の出なのでしょう。
そうでなければ、これほどの魔力はありえません。
これほどの魔力を持っているからこそ、継承権の低いフェルドナンドは警戒され、学院に追放されたのでしょう。

いえ、そうとは限りませんね。
父親か母親かはわかりませんが、保護者が敵から守ろうとして、中立をうたっている学院に預けた可能性があります。
ですがその保護者の力が衰えてきた。
フェルドナンドの魔力は当初よりも膨大になっているのでしょう。
実家の継承権を持つ者は、機会を待って必ずフェルドナンドを殺そうとする。
フェルドナンドはそう判断しているのかもしれません。

私がフェルドナンドでもそう考えるでしょう。
私が実家の継承者なら、フェルドナンドを殺そうとするでしょうか?
それとも味方に取り込もうとするでしょうか?
実際にその立場にならないと、判断できませんね。

フェルドナンドから実家を確認したいですね。
確証が欲しいです。
ですが口を割るとは思えません。
私なら絶対に口は割りません。
私が皇太子と接触して、好条件を引き出して、フェルドナンド暗殺に加担する可能性がありますからね。

「実家は教えてくれないのですね」

「さすがにそこまではお話しできません。
どうでしょうか?
私に領地をくださいますか?」

「渡しましょう。
ただし今の条件を魔術契約します。
それでいいですか?」

「もとよりそのつもりでした。
それで、どれだけの領地を賜れるのですか?」

「実際に未開地に行って考えます。
できれば取高で五百万石、税を二百万石欲しいですね。
ですが移民の与える領地もあります。
その点を話し合いましょう」

「承りました」

フェルドナンドから手に入れられる税は、取高五百万石で税額二百万石。
公爵家全体では取高百万石で税額四十万石。
もっとも公爵領の七割は家臣の領地や扶持に消えますから、使えるのは十二万石程度ですから、二百万石は喉から手がでるほど欲しいです。

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