「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第20話

「何か起こったのですか、フェルドナンド卿?」

「実験で得られた穀物をお届けに来ました」

「なにがどれくらい収穫できたのですか?」

「米が五万石。
小麦も五万石。
ライ麦と大麦は七万石ずつでございます」

「では四割を税として納めてください。
残り六割は魔力を使ったフェルドナンド卿のモノです」

「お断りさせていただきます。
それでは契約違反になります。
私は手に入れた爵位を手放す気はありません」

引っ掛かりませんでしたか。
別に伯爵位を奪うつもりなどありませんでした。
どれくらい約束や契約を重視するか知りたかっただけです。

「そうでしたね。
では本当に全ての魔力を私のために使ってくれるのですね」

「はい。
そういう約束でした。
ただし契約期間の一年間だけです。
一年の魔力で世襲可能な伯爵位をいただいたのです。
遠慮せず魔力を利用してください」

「では遠慮なくそうさせてもらいましょう。
エヴァ。
移民を希望する者を根こそぎ集めてちょうだい。
二十七万石もの穀物が手に入ったのです。
有効に使わなければなりません。
二十七万人を一年は食べさせることができます。
集まった人間を未開地の開発開墾に投入しなさい」

「承りました、マイロード」

エヴァは喜んでくれているでしょうか?
これで不可触民を少しは救う事ができます。
総人数が一千万人とも二千万人ともいわれる不可触民全員を助けることなど不可能ですが、少しはエヴァの心を軽くできたらそれでよしとしましょう。

「未開地に貧民を受け入れるための食糧なら、ライ麦と大麦で十分でしょう。
米と小麦は全部酒にいたしましょう。
領地にい酒蔵で造れない分は、他領や他国に売って金に換えましょう。
不足する食糧は、魔力の続く限る創りだして差し上げます」

「魔力の続く限りですか?
それは膨大な量になりそうですね。
総数的にはどれくらいになりますか?」

「米が五〇万石。
小麦も五〇万石。
ライ麦と大麦は七〇万石ずつでございます」

「二四〇万石ですか。
膨大過ぎる量ですね。
とても全てを備蓄できる量ではありませんね。
だからといって無暗に売り払えば、市場の穀物価格を暴落させてしまいます。
それでは農民を苦しめることになります。
フェルドナンド卿に何か策はありませんか?」

「それでしたら、私が遠国にまで運んで売り払いましょう。
いえ、私が閣下の側を離れるのは契約違反ですね。
弟子に売りに行かしましょう」

フェルドナンド殿はなにを考えているのでしょう?
ここまでの好意には、何か裏があるはずなのです。

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