「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第17話

「今から実験を行います。
よろしいですか、公爵閣下」

「ええ、始めてください」

私の合図を待って、フェルドナンド殿が魔術巻物を消費されます。
同時に目標となっている農地の小麦が目に見えて育っていきます!
驚嘆の事実です!
魔法で農作物の育成を早められるのです!
これが普及すれば、世界が劇的に変化します!

「素晴らしい!
素晴らしいです、フェルドナンド殿!
ですが、恐ろしく危険な知識と技術でもありますね?」

「さすが英邁の誉れ高き公爵閣下。
もしこの知識と技術が悪しき者にだけ伝われば、その者は世界制覇の野望に囚われる事でございましょう。
世界中に公平に広まったとしても、結局は人間が増えすぎ、食糧を争う事に変わりはありません」

「確かにフェルドナンド殿の申される通りでしょう。
だったら国や領主が民の数をコントロールすればいいのではありませんか?」

「人の欲を制御することほど難しいモノはありません。
特に生命の根源に近い、食欲と性欲をコントロールすることは至難の技、いえ、不可能だと考えております」

「そうですか。
そうかもしれませんね。
ですが、だったら、なぜ私に教えたのです?」

「公爵閣下一代なら、伝えても悪用しないと判断したからでございます。
その事、お忘れになりませんように」

「脅しているのですか?
フェルドナンド殿」

「私の好意と共に、助力を条件に脅かさしていただいています」

「よくわかりました。
その好意と警告を受け入れさせてもらいましょう。
フェルドナンド殿がその知識と技術を管理運用してくださるのですね?」

「はい、全力を持って助力させていただきます」

「ではフェルドナンド殿の魔力の限界まで、食糧の増産をお願いします。
特に長期保存が可能な、糒の原料となる米を増産してください」

「公爵閣下。
米に限らず満遍なく作りたいと思っています」

「なぜですか?
不作凶作に備えて糒を備蓄するのは反対ですか?」

「賛成でございますが、それだけでは領地の収益に結び付きません。
数年分の糒備蓄は必要ですが、それ以上は無駄になってしまいます。
同じ長期保存品なら、酒を造りましょう。
長期保存用の酒以外は、領外に売って利益にすることができます」

「その言い方だと、領地の収穫額の数年分もの食糧を作ってくれるの?
それほどの魔力を私のために使ってくれるというの?」

「はい、そうさせていただきます」

「見返りはなに?
なんの見返りもなく、それほど莫大な魔力を捧げてくれるはずはないわよね?」

「はい、私の居場所を作っていただきたいのです?」

これって、私の婿になりたいという事なの?

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