第13話

「エヴァ。
葬儀の席では親族席に座りなさい。
私の叔母として席に着くのです。
弔問に現れた王侯貴族には、エヴァが叔母であることを積極的に広めなさい」

「恐れながら、それはファンケン公爵家の名誉にかかわります。
先々代が不可触民との間に子供をもうけたことが広まるのも、その者を貴族の列に加えるのも、マイロードの評判を落とします。
どうかおやめください！」

「黙りなさい、エヴァ！
これは当主としての命令です！
それに損得は十分計算してあります。
エヴァを叔母と公表することによる利点と欠点も、エヴァを家臣に止めておいた場合の利点と欠点を計算して比較検討したうえで、公表すると言っているのです」

「恐れながらマイロード。
私も計算しました。
計算したうえで、公表する効果は少ないと判断しました。
どうか考え直してください、マイロード！」

「両親とエレノアを殺したことで、一族の層は薄くなっています。
私を舐める者まで現れました。
その対処にエヴァを最大限利用します。
私を狙うかもしれないモノも、私を先に殺してしまったら、ファンケン公爵家の後継者がエヴァになる事を忌み嫌うでしょう。
私より先にエヴァを殺そうとします。
私の盾になりなさい、エヴァ」

「しかしながらマイロード。
私を先に殺す必要などないです。
私に不可触民の血が流れている事を公表すればすむことです」

「誰がそんな事を話すのですか？
話した者は殺しなさい。
家臣だけではなく、どこの王侯貴族であろうと殺してしまいなさい。
それが可能な手配りはしているのでしょ？
だったら躊躇わずにやりなさい！
貴族を五人も殺せば、怖がって誰も言いださなくなります」

「ヤレと申されるのならやりますが、本当にいいのですか？」

「構いません！
断固としてやりなさい！
エヴァは私の叔母なのです。
昔からそう言い続けてきたでしょ？
今さら何を遠慮するのです。
おかしな叔母上ですね」

「マイロード！」

涙を浮かべて喜んでくれていますが、これも貴族令嬢の常識です。
利用できるモノは何でも利用して家の役に立てる。
それが例え自分と血のつながった親兄弟であろうとです。
血を分けた子供であっても変わりません。

叔母上も同じです。
突出した力を持つ叔母上の忠誠心は、なんとしてでも維持しなければなりません。
私の盾となって刺客を引き受けてもらわないといけません。
いつまでも日陰者では利用方法が限られるのです。

本当に貴族とはつらいモノです。
肉親の情を表に現すにも、多くの言い訳を必要とします。
叔母上には私の心の支えになってもらわないと、私の精神が保てないのです！