「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第7話

「……分かった。
彼らと彼らの縁者の領地を移封することを約束しよう」

「ありがとうございます。
では参りましょうか、近衛騎士の方々。
あ、申し訳ありませんが、このゴミも一緒に運んでくださいますか?」

「お任せください!
クラリス様!」

「いや、いや、いやぁぁぁぁあ!
たすけて、助けてください!
殿下!
王太子殿下!」

近衛騎士の方々がエレノアを運んでくださいました。
まるで安物の荷物のように、何の配慮もない運び方です。
普段から王太子の権威を笠に着て、近衛騎士の方々に対して失礼な言動をしていたのでしょう。

私の本気が伝わったのでしょう。
王太子は一言も発せず、邪魔はしませんでした。
ですが、頭が痛くなるくらい、エレノアはわめき散らしていました。
これ以上は近衛騎士の方々に申し訳ありません。
私の評判が悪くなっても、殺しておくべきでしょう。

いえ、私のためにも殺しておかなければなりません。
父上と母上が私の味方をするとは限らないのです。
愚かな国王と王妃のように、エレノアに情けをかけるかもしれません。
父上と母上はそのような愚か者ではないと思いますが、親の情とは理性で測れない可能性もあります。

私はファンケン公爵家の長女です。
情に流されるわけにはいかないのです。
ですが四角四面で考えてしまうと、貴族同士の関係がこじれてしまいます。
丁度いい加減、落としどころを見つける事が貴族には求められます。

「ヒィィィィイ!
ゆるして、ゆるして、許してくださいお姉……」

何度の何度も嘘八百のわびを口にしますが、心な中では復讐を誓っています。
私から見れば、復讐ではなく逆恨みなのですが、エレノアのような身勝手人間から見れば、復讐になるのでしょう。
こんな人間を生かしていたら、また何を仕掛けてくるか分かりません。
私がこの場で殺しておくべきでしょう。

父上や母上には、エレノアをこんな性格に育てた責任をとってもらいたいですが、それでは親に子供を殺させることになります。
私の基準では、貴族ならそういう決断をすべきですが、同時にそのような決断をさせた私は、娘として失格になるかもしれません。
娘なら、親に負担をかけないことが孝行だとも考えられます。

だから殺しました。
この手でエレノアの首を刎ね飛ばしました。
娘視点では、親に子殺しをさせないために。
貴族視点では、父上と母上がエレノアを許す可能性を考慮して、当主権限でエレノアを許してしまう前に殺してしまう事。
理想的な貴族であろうとすると、厳しい決断をしなければいけません。

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