第4話

「警備隊だ！
殺人未遂と恐喝で逮捕する。
逆らう者はこの場で殺す！
大人しく縛につけ！」

ギュンターは犯罪者ギルドのアジトのドアを蹴破った。
腕力だけでなく脚力も凄まじい。
声も大きく、幹部達が隠れている地下室にまで声が届いた。
だから幹部達は逃げなかった。
幹部達は警備隊を舐め切っていた。

「ちっ！
また裏金を要求しているだろ。
適当に相手してやれ」

犯罪者ギルドのマスター、ヴァンス・ベイクは舌打ちして命じた。
この場にいる五人の幹部のうち、一番下っ端に相手するように視線を送った。
ベイク組にとっては、警備団長などは重要な交渉相手ではない。
大臣や次官、騎士団長や将軍の方がずっと重要な交渉相手だった。
だが無視するわけにもいかないので、一番下の幹部に相手をさせるつもりだった。

だがそんな思いは粉々に打ち砕かれることになった。
ギュンターとルーベンが捕らえた兄貴分とチンピラを厳しく尋問して、アジトの間取りを聞きだしていた。
普通なら警備隊などに探し当てられない地下への道を、ギュンターとルーベンは知っていたのだ。

対応に出た幹部が一撃で両膝を砕かれ気を失い、時間をおかずにギュンターとルーベンは地下室に殴り込んだ。
普通なら大剣も槍も扱いにくい、低く狭い地下室だ。
特に槍は振り回すと天井や壁にぶつかり、武器としては全く役にたたなくなる。
だから犯罪者ギルドのマスターも幹部も、地下室では毒を塗った短剣を使い、素早く敵を殺す。

それが、ルーベンは突きを主体に槍を使い、しなる柄を蛇のようにくねらせ、天井や壁にぶつけることなく、変幻自在に操って敵を無力化する。
一方ギュンターも、大剣を大きく振りかぶることなく上手く制御して、天井や壁にぶつけることもなく、敵に叩きつけて無力化した。

「いいか、殺されたくなかった、警部団長や隊長達との癒着を証言するんだ。
さもないとこの場で殺すぞ」

「ふっ、ふふぁはははあは。
こいつは愉快だ！
俺達の後ろ盾が警部団長程度の小者だと思っているのか？
さっさと警備団本部に連れて行けよ！
直ぐに釈放の使者が王城からやってくるよ。
その時がお前達の最後だよ。
ふふぁはははあは」

「そうだぜ、バカが！」
「俺達にはヤンゴトナイお方が黒幕にいてくださるんだよ」
「いきがっても下っ端にできる事なんかないんだよ」
「後で切り刻んでやるよ」

ギュンターはどうしていいか分からなくなってしまった。
自分の正義を疑ったことなどないギュンターだが、それでも王家王国の重臣に腐った者がいる事くらいは理解していた。
だが同時に、清廉潔白な重臣もいて、証拠証人さえ整えれば、正義が行われると信じていたのだ。