「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集2

克全

第13話追放42日目の出来事

「駄目でございます。
また貢物を受け取ってもらえませんでした。
いかがいたしましょうか?」

家臣の報告はとても卑怯だった。
まあ、国王も卑怯で卑劣だから同類なのだが、家臣は保身を図らなければいけないので、どしても国王が愚物だとこうなってしまう。
家臣には、原因が癒しの聖女に対する国王の卑劣な行為だと分かっていた。
分かっていたが、それを自らは口にせず、あらゆる手段が失敗し、守護神の契約が破棄された証拠を突き付けて、国王が認めるのを待っていた。

「もっと貢物を増やせばよかろう。
強欲な守護神は、望む量が捧げられたら満足する。
欲しいだけくれてやれ」

「承りました、陛下。
お言葉通りにさせていただきます。
しかしながら陛下、もうすでに過去最高量の三倍になっております。
宝物殿の財宝の全て捧げ、食糧庫の穀物を全て捧げても受け取っていただけなかった時に、どのようにすべきかお考え下さい」

筆頭大臣は最後の諌言をするつもりで、遠回しに守護神に謝るように勧めた。
結構危険な言葉だった。
直接的には守護神に謝れとは言っていないが、愚者でない国王は、筆頭大臣が何を言いたのか十分理解していた。
理解した上で、それでも国王は自分の過ちを認めなかった。
それどころか、絶対に口にしてはいけない言葉を口にしてしまった。

「ふん!
その時は新たな守護神を探せばいいではないか。
全ての貴族士族に命じろ。
今契約していない神族を探せとな。
余自らが新たな建国王となって、この国をもっと栄えさせてくれる」

国王は家臣に対する見栄、虚栄心を捨てられなかった。
自らの過ちを認めることができなかった。
自らを建国王、絆になれるほどの王だと口にすることで、忠誠心を維持できると思っていた。
そして自分が魅力のある王だと思い込んでいた。

ちやほやされて育った王族の弊害だった。
常に利を得たい家臣から阿諛追従を受けて育つのが王族の定めだ。
半端に頭がいいと、やることなすこと全て大成功する。
気に入られたい家臣が、完璧に準備を整えるので、口先だけの理論を実際に成し遂げることが、どれだけ難しいかを知らない。

いや、そもそも成功すらしていないケースも多い。
見せかけだけを整えているだけのケースも多かった。
以前より利益が出ているように見えて、利益以上の費用と労働力を費やしているような事も多く、役人は出世したり利益を得たりしていても、国庫が減少し民が疲弊している事も多かった。

だが今回の件だけは、取り繕う事のできない守護神との契約だ。
しかもすでに守護神との契約が切れている。
それを本当は理解していながら、虚言を口にするだけで全く対策をとらない。
家臣と民の逃亡が始まった。

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