「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集2
第1話追放1日目の出来事
「月神殿の癒しの聖女アリス。
今日まで役目ご苦労であった。
月神殿と聖女の無償の厚意には感謝している。
だが、さすがに今の聖女を王太子殿下の正妃にするわけにはいかない。
老いさらばえた聖女では、王太子殿下の子を生むのは無可能であろう。
王太子との婚約は解消する。
だが余も恩知らずではない。
アリスには徒士家の資格と聖地を領地に与え、今迄の功労の報いる。
今日中に領地に向かうがいい」
「「「「「クスクスクス」」」」」
謁見の間に集まった貴族士族、特に令嬢達の嘲笑が、衰えた耳にまで届きます。
実質追放、いえ、死刑の宣告です。
七十歳を越えた老婆に見えるまで生命力を失った私に!
奇病なのか呪いなのか分からない王太子を治すために、五年の長きにわたって、この身を削り生命力をすり減らし、激痛に耐えながら王太子を癒し続けた私に!
日に日に若さを失い、老婆になるまで治療を続けた私に!
最後に与えられたのは、聖地とは名ばかりも草木も生えない不毛の地と、謁見資格もない士族最低の徒士位です。
怒りの奥歯を噛み締めて耐えたくても、一本の歯も残っていません。
怒りをぶつけたくても、手足に力を込める事もできません。
拳を握り締めたくても、無意識に四肢が震えます。
視力も衰え、憎い国王の顔さえ分かりません。
せめて、せめて王太子殿下から労いの言葉があれば、残り少ない時を、恨みと憎しみだけの時間にしなくてすみます。
ただひと言、ありがとうとさえ言ってくだされば……
「なにをしている!
さっさと見苦しい老婆を追い出せ!
臭くて見苦しくて耐えられん。
私は早く快気祝いの舞踏会に行きたいのだ!」
王太子の情け容赦のない言葉が、私の肺腑をえぐりました。
悔しい!
私の人生は何だったのだ!
苦痛と苦悩に耐えるだけの人生!
この国の神は邪神だ!
このような王族に力を与えるなんて、邪神以外の何者でもない。
私は近衛騎士に情け容赦なく謁見の間から連れ出された。
抵抗する力などない。
老いさらばえた身体を、乱暴に馬車のある所まで連れて行かれて、一番穢い馬車に押し込まれた。
後で知った事ですが、犯罪者の護送用の馬車でした。
「やあ、災難だったね。
今までご苦労さん。
王家の糞共が君の功労に報いず、このような非道を行うのは許し難いね。
僕にも多少の責任があるから、復讐に協力させてもらうよ」
馬車に放り込まれた私に、誰かが話しかけますが、半死半生の私には、老いさらばえ眼もよく見えなくなった私には、姿を見る事もかないません。
復讐を手助けすると言われても、そんな事は不可能です。
このような馬車に乗せられたら、振動で跳ね飛ばされて直ぐに死んでしまいます。
死んだ人間に復讐など不可能です。
せめて呪いをかける事ができれば、復讐できたかもしれませんが、今の私に残された魔力と生命力では、初級下の魔法一つも発動できません。
もう、意識が遠くなってきました。
神など信じません。
魔よ、この世に仇なす魔よ!
私の恨みを晴らしてください!
「今はお休み。
君の怒りと憎しみは、僕がかなえてあげるよ」
今日まで役目ご苦労であった。
月神殿と聖女の無償の厚意には感謝している。
だが、さすがに今の聖女を王太子殿下の正妃にするわけにはいかない。
老いさらばえた聖女では、王太子殿下の子を生むのは無可能であろう。
王太子との婚約は解消する。
だが余も恩知らずではない。
アリスには徒士家の資格と聖地を領地に与え、今迄の功労の報いる。
今日中に領地に向かうがいい」
「「「「「クスクスクス」」」」」
謁見の間に集まった貴族士族、特に令嬢達の嘲笑が、衰えた耳にまで届きます。
実質追放、いえ、死刑の宣告です。
七十歳を越えた老婆に見えるまで生命力を失った私に!
奇病なのか呪いなのか分からない王太子を治すために、五年の長きにわたって、この身を削り生命力をすり減らし、激痛に耐えながら王太子を癒し続けた私に!
日に日に若さを失い、老婆になるまで治療を続けた私に!
最後に与えられたのは、聖地とは名ばかりも草木も生えない不毛の地と、謁見資格もない士族最低の徒士位です。
怒りの奥歯を噛み締めて耐えたくても、一本の歯も残っていません。
怒りをぶつけたくても、手足に力を込める事もできません。
拳を握り締めたくても、無意識に四肢が震えます。
視力も衰え、憎い国王の顔さえ分かりません。
せめて、せめて王太子殿下から労いの言葉があれば、残り少ない時を、恨みと憎しみだけの時間にしなくてすみます。
ただひと言、ありがとうとさえ言ってくだされば……
「なにをしている!
さっさと見苦しい老婆を追い出せ!
臭くて見苦しくて耐えられん。
私は早く快気祝いの舞踏会に行きたいのだ!」
王太子の情け容赦のない言葉が、私の肺腑をえぐりました。
悔しい!
私の人生は何だったのだ!
苦痛と苦悩に耐えるだけの人生!
この国の神は邪神だ!
このような王族に力を与えるなんて、邪神以外の何者でもない。
私は近衛騎士に情け容赦なく謁見の間から連れ出された。
抵抗する力などない。
老いさらばえた身体を、乱暴に馬車のある所まで連れて行かれて、一番穢い馬車に押し込まれた。
後で知った事ですが、犯罪者の護送用の馬車でした。
「やあ、災難だったね。
今までご苦労さん。
王家の糞共が君の功労に報いず、このような非道を行うのは許し難いね。
僕にも多少の責任があるから、復讐に協力させてもらうよ」
馬車に放り込まれた私に、誰かが話しかけますが、半死半生の私には、老いさらばえ眼もよく見えなくなった私には、姿を見る事もかないません。
復讐を手助けすると言われても、そんな事は不可能です。
このような馬車に乗せられたら、振動で跳ね飛ばされて直ぐに死んでしまいます。
死んだ人間に復讐など不可能です。
せめて呪いをかける事ができれば、復讐できたかもしれませんが、今の私に残された魔力と生命力では、初級下の魔法一つも発動できません。
もう、意識が遠くなってきました。
神など信じません。
魔よ、この世に仇なす魔よ!
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