「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集2

克全

第18話

「残念だけど、今起こすわけにはいかないね。
魔力が枯渇してしまっていて、今蘇生させるのは危険だ。
準備万端整えてからでないと難しい。
ここは一旦戻ろう」

「はい、アルフレット様」

アルフレット様と私は、僅か十日で魔族の地下シェルターを発見しました。
私ではとても発見できないような、地底奥深くにありました。
ですが、すべての魔族を養うだけの物資と魔力を確保できなかったのでしょう。
数万の魔族が魔法陣による眠りについていました。
ですが、使われていた魔法陣の土台となる魔獣皮紙も、個人的な魔力も、用意できた魔晶石も、アルフレット様のようにはいかなかったようです。

全ての魔族がミイラ化してしまっていました。
アルフレット様なら、数十人くらいなら、何の用意もせずに蘇生できると思うのですが、とても慎重に対応されるようです。
何か準備をされるとのことです。
私に反対意見などありません。
アルフレット様を信じてお手伝いするだけです。

「ここに魔獣牧場を造る。
いや、亜竜牧場を造る。
最終的に復活させるのは、強力な魔力を持ち、大きな魔晶石がとれる腕龍だ。
だがその前に、腕龍を抑えるだけの紙兵とゴーレムを用意する。
手伝ってくれるね」

「はい!
できる限りのお手伝いをさせていただきます」

亜竜種でも最大級の腕龍の復活。
確かにとても危険です。
広大な未開地から人間の世界に出て、破壊の限りを尽くすだけならいいのですが、アスキス家に被害を出してはいけません。
そんなことになったら、アルフレット様が心を痛められます。

だから順番に復活させることにしました。
小さな魔晶石がとれ、魔獣皮紙の材料となる、それなりの魔獣からです。
魔都坊の建設予定地に、魔獣牧場用の坊を先に造ります。
放牧予定の魔獣の強さにあわせて、坊壁の強度と厚みと高さを決めました。

魔獣の復活とは、具体的にどうするかというと、アルフレット様が保管されていた魔獣の素材を使い培養するのです。
元々の魂まで元通りにすのではなく、器となる体だけを培養するのです。
具体的には血液を利用して元の体を培養します。
そしてそれは成功しました。

培養した魔獣の体に宿った魂がどこから来たのか?
その事は永遠の謎だそうです。
アルフレット様ですら解明できていない謎だそうです。
でも謎を究明している時ではないので、とにかく牧場を始めました。
最初に草食の魔獣の餌用に、魔樹を植林促成栽培しました。
次に魔鼠、魔兎、魔鹿を培養して放牧しました。

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