「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集2

克全

第4話

本当に信じてもいいのでしょうか?
途中で悪夢に変わって襲われるのではないでしょうか?
信じた者に裏切られ、激痛のうちに喰い殺されたりしないでしょうか?
哀しい事ですが、疑い深くなってしまっています。
ほとんどの人を信じられなくなっています。

「だいじょうぶ、だいじょうぶ。
そんなに心配だったら、なんでも望みをかなえてあげるよ。
望みがかなったら信じられるんじゃないかい。
それとも何か欲しいモノをあげたほうが信じられれかな。
何か欲しいモノはあるかい?」

私の望みをかなえてくださるというのですか?
私の欲しい物をくださるというのですか?
私の望みとはなんでしょうか?
分かりません。

婚約者だった王太子殿下と結ばれたいとも思えません。
妹に復讐したい訳でもありません。
欲しい物と言われても、父上も母上も私を何不自由なく育ててくださいました。
欲しい物など何も思い浮かびません。

物でなくてもいいのでしょうか?
何でもいいのなら、護ってくれる動物でもいいのでしょうか?
ジョージのように私を護ってくれる騎士はいますが、彼は男性なので、寝所のように一緒にいられない場所があるのです。
乳母や乳姉妹はいてくれますが、ジョージほどの武力はありません。
常に側にいてくれる強い動物がいれば、心から安心できるのですが……

「私を護ってくれる動物でもいいのですか?
夜一人で眠る時が怖いのです。
乳母や乳姉妹が見守ってくれていますが、それでも怖いのです。
さすがに一緒に寝て欲しいとは言えません。
私と一緒に寝てくれて、何があっても護ってくれる、安心できる動物が欲しいと言ったら、かなえてくれますか?」

「なんだ、そんなことならお安い御用だよ。
でもどうなの、人間は大きくて強そうな動物を怖がるよね。
乳母や乳姉妹が警戒したり怖がったりするんじゃないかな?
まあ、いいか。
他の人間が何を考えても僕には関係ないしね。
でも部屋に入れるくらいの大きさの方がいいよね。
だったらこの子、天虎を側仕えにしてあげるよ。
でもね、間違えないで。
これからは、常に君の側には精霊がいるんだよ。
ひと声かけるだけで精霊が姿を現して助けてくれるよ」

「ガァアァアァアァアアア!」

巨大な虎です!
二頭の虎です!
翼のはえた虎です!
信じられないほど巨大な虎です!
尾を含まない体長だけで四メートル以上あるのではないでしょうか?
黒と赤の縦縞模様の翼の生えた虎です!
黒と青の縦縞模様の唾さんの生えた虎です!
何て雄々しく可愛いのでしょう。
ひと目で心惹かれてしまいました。

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