「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集2

克全

第4話

魔力がガリガリと削られます!
刺客が雨霰と強力な魔法攻撃を仕掛けてきます。
誰かに見られる前に私を殺してしまいたいのでしょう。
ですが下手な攻撃です。
私の魔法防御は物理攻撃と魔法攻撃の違いが分かりません。
威力の弱い弓の攻撃であっても、魔力を使って防御します。
最初は弓を射かけて私の魔力を減らし、最後に強力な魔法攻撃を放つ方が効率的なのでが、最初から強力な魔法攻撃を繰り返しています。
私が魔法の特性を秘匿しておいた効果かもしれませんね。

「御嬢様、反撃します」

エスメが馬車から身を乗り出して魔法攻撃を始めました。
ありふれた火魔法ですが、威力があります。
私の乳母に選ばれたのも、同時期にアバを産んだ偶然からではありません。
忠誠心があるのは当然ですが、強力な攻撃魔法と防御魔法が使えるから選ばれたのです。

エスメの事ですから、刺客本人を狙うわけではありません。
刺客を狙っても、防御魔法で防がれる可能性もあれば、魔法防御を施した魔道具を装備していたり、装飾品を身につけていたりします。
こういう時は乗っている馬を狙うのです。
魔道具はとても貴重なモノですから、馬にまで装備させられる者は極少数です。

「御嬢様、苦しいでしょうが踏ん張ってください。
刺客は馬にまで防御魔法の魔道具を装備させています。
投石と弓に切り替えます」

敵はこの国一番の権力者、国王です。
侯爵家令嬢が考える常識では当てはまりませんね。
馬にまで防御の魔道具を装備させているなら、武器の魔道具も刺客に持たせているはずです。

エスメもそれを危惧したのでしょう。
持久戦の覚悟をするように言葉をかけてくれます。
私の魔力がもつか、刺客が与えられた魔道具の魔力と刺客本人の魔力が上回るか?
残念ながら圧倒的に不利ですね。
こんなに早くに切り札を使わなければいけないのでしょうか?

「御嬢様。
前方に回り込む刺客はおりません。
私も後方攻撃に加えてください」

ハリーが作戦変更を献策してきました。
確かにその方がいいかもしれません。
伏兵がいないのなら、追撃を食い止める方が大切です。
前方に伏兵が見えてからでも、ハリーは反撃を間に合わせてくれるでしょう。

「そうしてください、ハリー」

見る間に私が展開している魔法防御を襲う攻撃が減りました。
ハリーが正確に刺客に攻撃を命中させてくれているのでしょう。
私は馬車の中にいますから、自分の目で確かめる事はできませんが、状況を想像することは簡単です。

ここは切り札の一枚を使うべきでしょうか?
反撃して一気に刺客を壊滅させるべきでしょうか?

「刺客が吹き飛びました!
騎士です!
騎士が助太刀してくれるにようです!」

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