「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第3話

「待ってください!
俺達のせいでカミラ殿がこの都市を出て行ってしまったら、俺達は他の冒険者から嬲り殺しにされてしまいます」

初級攻撃魔術士の男は、ちゃんとモノが考えられるようですね。
まあ、確かにそうなるでしょうね。
神殿や開業治癒術師の半額で治療する私が、命の恩人を危険にさらすような真似をしたこの者達のせいで、この都市を出て行ったとなれば。

「ですが、この人は絶対に話すでしょ?
どれほど言い聞かせても、自分の想いを優先するでしょ?
今まで何度も同じことを繰り返したでしょ?
私も命は惜しいのですよ。
殺されてから後悔しても、どうにもならないのですよ。
貴方ならこの人の言う事を信じて、座して死を待ちますか?」

「それは……」

やれ、やれ。
命を預けてダンジョンに挑む仲間からさえ、口の軽さを信用されていない男。
戦闘力がなければ、とうに追放されていますね。
それに、盾役というのも大きいのかもしれませんね。
命懸けで仲間のために魔獣の攻撃を受けてくれる盾役は、そう簡単には見つけることができませんから。

「カミラ殿、先ほども申し上げましたが、ロイドが何かしゃべろうとしたら必ず私達で止めます。
止められなかったら、責任をとってロイドを殺し、逃げていただくように、ここに知らせに来ます。
だから明日ここから出て行くというのは止めていただけませんか?」

槍使いの男は本気のようですね。
ですが他の者達はどうでしょうか。
槍使いがいない時にしゃべる可能性があります。
ロイドという男が独り抜け出して遊び惚けている時に、多くの人に面白おかしくしゃべる姿が思い浮かびます。

「私も誓います」

治癒術師の女も誓ってくれるようです。

「私も誓うよ」

狼獣人族の女も誓うと言っています。

「僕も誓います。
契約神ミスラに誓って、ロイドがこの秘密を誰かに話した時は、命を賭けてロイドを殺し、カミラ殿のお知らせします」

「おい、おい、おい。
どれだけ俺の事を信用していないんだ!」

どうやらロイドという男は、悪意なく、その場その場で調子のいいことを話し、注意してくれる親身な者との約束を平気で破るのでしょう。
その積み重ねが、パーティーメンバーのこの態度なのでしょう。
それでも、冒険者としてダンジョンに入る時には信頼できるという、とても困ったパーティーメンバーなのでしょうね。

「分かりました。
ロイド殿も含めたパーティーメンバー全員が、契約神ミスラ様に誓ってくれるのなら、明日この都市から逃げるのは止めましょう。
でも本当に、ロイド殿が誓いを破ったらミスラ神の神罰を受けると、誓ってくれるのですか?」


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