「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第4話

「話してやってもいいが、これ以上は飲み食いじゃたらん。
情報料をもらわなけりゃ離せないレベルだ」

「へええ、親父さん情報屋も兼ねているんだ、凄いね。
ただ金銀はあまり持っていないのよ。
魔核や魔石ならあるんだけど、ここは魔石で支払えるの?」

「ああ、大丈夫だ。
魔核でも魔石でも魔晶石でも、正規の比率で受け取ってやる。
今から話す情報なら、並の魔石なら十個で受けてやろう」

並魔石十個ね、大銀貨一枚とは吹っかけてくれるわね。
ひとり暮らしの女なら、ひと月以上楽に暮らせる金額。
でも、この親父さんなら、どうでもいい情報を高値で売りつけたりしない。
そう信じられるだけの気配と目の輝きを持っているわ。

「分かったわ。
でも、できれば、魔核で受け取ってもらえれば助かるわ。
ここに来るまでに狩りをしたんだけど、まだ換金できてないのよ」

「低級とはいえ、ひとりで魔獣千頭を斃したというのか?」

「ええ、そうよ。
これでもそれなりの狩人なのよ」

「分かった、並魔核で受けよう」

私の言葉が本当か確かめたいのね。
いいでしょう。
しっかりと確認してもらいましょう。

「なるほど、腕利きの狩人だというのは嘘ではないようだ。
だったらなおさらこの情報には価値がある。
獲物が多いからといって、フィッツジェラルド王国領に入るな。
今あの国は生贄を集めている」

「どういう事よ!
ヨトゥン神が人間の生贄を求めているというの?!」

「ああ、その通りだ。
フィッツジェラルドの国王は冷酷だ。
国の利益になるのなら、情け容赦しない。
そのためなら、守護神を乗り換える事も平気なんだ。
アース神族とヨトゥン神族を比べて、自国の利益になる方に切り替えたというのが、各国の指導者層の結論だ」

「なに言っているのよ!
自分の国の人間を生贄にして、どこが国の利益になるのよ!」

「冷静に聞きな。
王侯貴族から見れば、平民など財産でしかないんだ。
財産は上手く使って増やさないといけない」

「だったら生贄にしちゃいけないでしょ!
殺しちゃいけないでしょう!」

「同じ人間の値打ちが、条件によって違ってくるんだ。
エイル神の守護を受けていた時は平民の価値が低くて、ヨトゥン神の守護を受けている時は平民の価値が高い。
単純にそういう話だ」

「分からないわ!
全然分からない!
なぜ慈愛と治療の神、エイル神の守護を受けている時の平民の価値が低いのよ!
エイル神は死んだ者まで蘇らせてくれるのよ。
その人間が働けば、国は豊かになるじゃないの。
全然分からないわよ!」

「それがフィッツジェラルドの国王には損失になったんだ。
人がなかなか死なず、限られた国土の中では養いきれなくなったんだ」


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