「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第2話

「おい、グレイス。
えらく立派な木が育ったじゃないか。
だがそれは俺様の種のお陰だよな。
この木を俺によこしな。
そしたらお前の罪をリドワーンに黙っていてやるよ」

孫悟空はいつももようにグレイスを脅しました。
また簡単にグレイスが譲ると思ったのです。
ですが今回のグレイスは引き下がりませんでした。
息子リドワーンが言ってくれたのです。

「母さん。
もう我慢する事はないよ。
僕は母さんの事を知っているよ。
昔人間を襲って食べていたことは聞いたよ。
でもそれは昔の事じゃないか。
今は反省して人間を襲っていないじゃないか。
それに妖怪が人間を襲って食べるのは普通の事だよ。
人間だって豚や牛や羊を食べているんだ。
母さんだけがいつまでも気に病むことはないよ」

リドワーンのそう言ってもらったグレイスは、もう何も怖くありませんでした。
孫悟空に逆らって殺されることになっても、誇り高く暮らしたいと思いました。
リドワーンの尊敬できる母親でありたい。
その思いが、天の神々さえ危険視する孫悟空に逆らう勇気を与えたのです。

「じゃかましいわ!
私は誇り高い化蟹のグレイスだよ。
何時までも性根の腐った石猿に脅かされちゃあいないんだ。
この木は私の魔力と神通力で育てたんだ。
だから私のモノだ」

「おのれ!
優しくしてりゃあつけあがりやがって。
死にさらせ!」

下に見ていたグレイスに逆らわれ、啖呵を切られた孫悟空は激怒した。
如意棒を伸ばしてグレイスを突いた、
一切の容赦をせず、本気で殺すつもりで突いた。
だがそこに風が吹き荒れ、大木の葉が孫悟空の視界を奪った。
如意棒の狙いをわずかにそらした。

それでも、完全にグレイスを護る事はできなかった。
如意棒がグレイスの甲羅を叩き割り、内臓を破壊し、さらに内部から甲羅を突き破って地面を突き刺さった。
グレイスは如意棒に串刺しにされ、地面に縫い付けられた状態だった。
グレイスは瀕死の状態となった。

それに怒ったのだろうか?
今まで以上に風が吹き大木の葉が孫悟空を押し包んだ。
しかも今度は目隠しするだけではなかった。
葉が鋭い刃物のようになり、孫悟空の身体を切り刻もうとしたのだ。

孫悟空は驚き慌てた。
性格は最悪だが、それでも神々が警戒するほどの力を持った上仙人だ。
生れも石から生まれた石猿だ。
その孫悟空を傷つけるなど尋常の相手ではない。
だが簡単に切り刻まれる孫悟空でもなかった。
仙術を使って葉の攻撃を防いだ。

だが大木の攻撃はそれだけではなかった。
普通の大木が数十集まったような太い枝が、孫悟空を殺そうと動き出したのだ。
孫悟空は一時撤退することにしたが、丁度その時にリドワーンが帰ってきたのだ。

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