「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第14話

「よくやってくれました。
こんなに早く、こんなにもたくさんの魔山羊紙を作ってくれるとは、思っていませんでした。
心から感謝します」

「ねぎらいの言葉をいただき感激です。
オリビア様の願いをかなえられてよかったです」

本当に早かった。
オリビア村の維持運営に必要な最低人数を残して、全忍者が獣皮紙作りに参加し、全身全霊を傾けた。
普通は原材料の皮を手に入れてから最短でも二十二日間かかる。
まして強力な魔獣、魔鹿や魔羊級の魔獣を狩らなければいけないのだ。

ところが予想外の者達が参戦した。
日々それほどオリビアのために働けていなかった、狼と天馬と一角馬が魔獣狩りに参戦したのだ。
まあ、狼に魔獣の相手は厳しいのだが、忍者軍団が抜けた村の維持運営には、もの凄く助けになった。

狼が小動物を狩ってきてくれたお陰で、日々必要な食材が確保された。
獣の肉なので、臭いのは仕方がないが、毎日お腹一杯肉が食べられる。
それに寝床に敷く毛皮がどんどん増えていった。
寝床に敷くだけではなく、冬に向けての防寒具も必要だった。
雪など降らない国だし、比較的温暖な未開地だが、朝晩は防寒具がなければ風邪をひく程度には寒くなるので、今のうちに毛皮を備蓄したかったのだ。

大活躍したのは天馬と一角馬だった。
どれほど逃げ足の速い魔鹿や魔山羊や魔羊でも、天馬や一角馬からは逃げられないし、強烈な後ろ蹴りを喰らうと一撃で死んでしまう。
手当たり次第というか、足当たり次第に狩っていくのだ。
それを毎日山のようにオリビア村に持ち帰る。

こうなると忍者には魔獣狩りに行く時間がなくなる。
魔鹿皮紙や魔山羊紙を作る下準備に忙殺されてしまう。
下準備で集めなければならない素材も沢山ある。
それを集めるために奔走することになった。
さらにいえば、オリビアの命を無駄にしてはいけないという指示も追加された。
狼と天馬と一角馬が狩ってきた獣と魔獣を解体し、肉を保存できるようにした。
塩漬けはもちろん、干肉にしたり燻製にしたり、命を無駄にしないようにした。

最初に完成したのは、初日に狩られた二十三枚の魔鹿皮紙だった。
これからも毎日同じくらいの魔獣皮紙が完成する。
それをどう使うかは、これから行われる実験結果次第だ。
だがそれにはオリビアも、オリビアも事前にやらなければいけない事があった。

「ソフィア。
事前の創っておいた血墨を持ってきてください」

オリビアがそう言うと、側近と呼ぶべきか侍女と呼ぶべき決まっていないが、オリビアの側近くで雑用をすることになった、女忍者ソフィアが魔鹿の血液で創った血墨を持ってきた。
オリビアは血墨をペンにつけて、魔鹿皮紙に刻み込むように、真剣に魔法陣を描いていった。

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