「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第12話

「もう心配いりませんよ。
安心してください。
お腹がすいたでしょう。
喉がかわいたでしょう。
これを食べてくださいね」

オリビアとネイは、人里に近いところまで天馬の乗って行った。
そこには男がフラフラと彷徨っていて、オリビアが救いの言葉をかけたのだが、その男は慌てて手で顔を隠した。
何故ならその男の顔は醜く変貌していたのだ。

「気にしなくていいのですよ。
病気に罹るのは仕方がない事です。
それは病気やケガと同じなのですよ。
少なくとも私は気にしていませんよ」

「ですが、国では神罰だと言われて、森に追放されたのです……」

「神様はそのような優しい方ではありませんよ。
神罰を下される時は、人間を滅ぼしてしまわれます。
ラムダフォード王国の話は聞かれていますよね?」

「はい、聞いています。
神様に罰せられて滅んだと。
領地は全て魔境になってしまったと」

「その通りですよ。
だから分かるでしょ。
神様はそのような罰を与えられません。
与える時は激烈なのですよ」

「ですが……」

「直ぐには信じられませんか?
仕方ありませんね。
神様の事は時間をかけて理解してもらいましょう。
それよりも食事です。
食べないと元気になりませんよ。
遠慮せずに食べてください」

オリビアは未開地に追放された男を助けて横穴洞窟に連れ帰った。
昔王都で貧民の世話をしていたように、弱者を救うのだ。
それを遠くから見ていたキャスバルたち忍者は茫然自失となった。
醜く顔が変貌した男をオリビアが連れ帰り、一緒に暮らし始めたのだから当然だ。
特にキャスバルは嫉妬で眠れぬ夜を過ごした。

だが直ぐにキャスバルは、つまらない誤解だと思い知ることになった。
自分のような小人が、オリビアのような聖女に恋するなんて、身の程知らずの罰当たりだと思い知ることになった。
オリビアとネイは、毎日のように天馬に乗ってどこかに出かけて行き、戻る度に顔が醜く変貌した者を連れ帰るのだ。
それに男女の区別がない事は、忍者なら直ぐに分かることだ。
何故ななら忍者は身体つきで性別が分かるのだ。

「さあ、貴男たちは柴を集めてきてください。
狼たちに護衛について行ってもらいますから、安心してください。
貴女たちは木の実と果実を集めてきてください。
一角馬たちに護衛について行ってもらいますから、安心してください。
貴女たちは川に洗濯に行ってください。
天馬たちに護衛について行ってもらいますから、安心してください」

病の人間は見る間に増えていきました。
キャスバルや忍者たちは、最初気味悪く思いましたが、オリビアとネイが全く変わりなく普通に接するので、自分達が見た目で偏見を持っていたのだと思い知り、改めてオリビアこそが聖女なのだと思い知りました。


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