「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第9話

ラムダフォード王国の国王ウィリアムは苦悩していた。
キャスバルの名前で、普通とは違う方法で、報告書が届けられたからだ。
一枚は日課の散歩の際に庭に置かれていた。
もう一枚は、後宮のベットの上に置かれていた。
全く同じ内容だった。
だが、毎日の報告書だけが届いていなかった。

理由は分かっていた。
誰かが隠蔽したのだ。
隠蔽した理由も想像ができた。
内容が衝撃的過ぎたのだ。
王太子をかばうつもりなのか、側近の自分を子供をかばいたかったのか。
どちらにしても、国王が特別に命じた任務の報告書を握り潰すなど、絶対にあってはいけない事だった。

本当なら直ぐに王太子を呼び出し、厳しく調べなければいけない事だ。
隠蔽しようとした大臣も逮捕監禁しなければいけない。
そうしなければ、オリビアはもちろん、忍者たちも口封じで殺されてしまう。
その事を国王ウィリアムも気がついていた。
だが直ぐに決断できなかった。
九割九分九厘、事実だと理解していながら、これがオリビアの報復で嘘だと思い込もうとしていた。

国王が苦悩する数日の間に、事態は大きく動いていた。
オリビアと忍者たちを殺そうとする者が現れたのだ。
その指揮は、第一騎士団長ジェイコブの息子で、次期騎士団長と目されているチャーリーだった。
第一騎士団員全員をだすことなどできないので、チャーリーが指揮している第一騎士隊が派遣された。

騎士長のチャーリー、騎士が十騎、従士が百騎が、オリビアと忍者たちに襲いかかったのだが、ジェイコブもチャーリーもバカだった。
家柄だけで選ばれた騎士は本当の戦士ではない。
命懸けの修行をしてきた忍者たちにかなうはずがないのだ。

オリビアと忍者たちを襲う遥か手前で、その存在を忍者たちに知られていた。
それも当然だろう。
百十一騎のも騎士が、馬蹄を轟かせて疾走するのだ。
その音と地響きには、誰だって気がつく。
まして、送れば襲われるかもしれない報告書を、覚悟のうえで送ったのだ。
忍者たちの警戒と戦闘準備は完璧だった。

チャーリーたち騎士隊は、オリビアの遥か手前で忍者たちの迎撃を受けた。
完全装備の板金鎧であったが、面貌にはスリットが入っている。
そこを狙って、目潰しが次々と投げられた。
視界を失い、激痛に苦しむ騎士団員は、次々と落馬した。
落馬した後で、鍛え抜かれた軍馬を奪われてしまった。
莫大な価値のある軍馬と馬鎧は、これからの逃亡を考えれば、忍者たちには絶対に確保しなければいけない財産だった。
全ての軍馬を生きて手に入れてから、落馬の衝撃で身動きできなくなった騎士たちの面貌に、毒を流し込んで殺していった。

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