「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第9話

私たちはバルフォア侯爵領を一気に突破しました。
私が今まで隠していた魔法を使ったのです。
家族にすら黙っていた魔法ですが、今が使い時と判断しました。
それでもソフィア、ローザ、クラリス以外には知られないようにしています。
隠せる限りは隠しておきたいのです。

ですから使った魔法は補助魔法ばかりです。
私を含めた四人の身体能力を強化し、少しでも早くバルフォア侯爵の勢力圏を抜けだすのです。
隠蔽や隠密、魅了の魔法を使って逃げのびるのです。

「ファティマ姉さん。
この力があれば、バルフォア侯爵の寝首を掻けるのではありませんか?」

ローザは過激ですね。

「力を過信してはいけません。
バルフォア侯爵家は新興貴族ではありませんよ。
当主一族を護るための魔道具を数多くそろえています。
眼しか開けている魔法使いの数も能力も多いのです。
先の戦いで幾人かは失っているでしょうが、自分を護るための魔法使いは温存しているはずです。
忍び込んだら生きて帰れませんよ」

「そうですよ、ローザ。
さっき考えるのはファティマ姉さんに任せると言っていたではありませんか!
言った舌の根も乾かないうちになにを言っているのですか!」

ソフィアがローザに腹を立てています。
まあ今回はソフィアが正しいです。
考えなしでは困ります。

「……分かったよ。
私が悪かったよ」

ローザがソフィアに反論しそうになって、チラリと私の方に視線を向けて、私が本気で怒っているのを感じたのでしょう。
思い直して謝りました。
自分の欠点を自覚してくれないと、家族が死ぬことになります。
今回はかなり厳しく怒りました。

「ごめんなさい。
私が悪かったです。
これからはソフィア姉さんの言う事もちゃんと聞きます。
だから許してください、ファティマ姉さん」

「分かればいいのですよ。
でもこれが最後の機会ですからね。
家族を死に巻き込むと判断したら、今度は注意せずに殺しますからね。
覚悟しておきなさい」

「はい!」

ローザが直立不動で返事をしました。
ソフィアとクラリスも真っ青になっています。
軽い脅しを本気にしています。
でも大切な事なので、怖がらしておきましょう。

「私たちはこのまま王都にまで向かいます。
私は王都の魔法学校に入って、正式に魔法を学びます。
貴女たちは軍学校に入ってもらいます。
王家が遊学を正式に書面で約束したくれたのです。
それを利用しない手はありません。
バルフォア侯爵も王都で騒乱を起こす事はできません。
力の落ちた今そんな事をすれば、近隣の有力貴族が侵攻の口実にします。
私たちは稼いだ時間で実力を蓄えるのです。
新たな結婚相手を探して、バーリー男爵家の力になるのです。
いいですね!」

「「「はい!」」」

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品