「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第4話

非情なようですが、半死半生の五千人は皆殺しにしました。
バーリー男爵家の領民は、老若男女合わせて五千人しかいないのです。
兵士に選ばれるような頑健な男五千人を見張る事など不可能です。
だから予定通りの方法で皆殺しにしました。
私をはじめとした、魔境での狩りに手慣れたものが、魔獣や亜竜を釣りだしてバルフォア侯爵軍を襲わせるのです。

バルフォア侯爵軍は魔境と奥山の正確な境界線が分かりません。
特に月齢によって変化する境界は地元の住民しか知りません。
軍城が築かれているのは、その境界を計算して、バルフォア侯爵軍を魔獣や亜竜に襲わせるのにちょうどいい場所に築城されているのです。
最も安全な時期であっても、細長い安全な道を綱渡りのように行くのです。

そして安全な時期であっても、魔獣や亜竜は魔境から出てきませんが、獰猛な獣は現れるのです。
魔境と奥山の間に縄張りを持つ獣は、いずれは魔獣化する強力な獣です。
猛獣と表現すべき強力な獣なのです。
そんな猛獣が襲ってきたら、さんざん魔獣や亜竜に襲われ、壊滅的損害を受けた残存兵は狂乱状態になります。

そこを、情け容赦なく遠矢で射殺すのです。
自分たちは一切被害を受けないようにして、皆殺しにするのです。
やりたくてやってるわけではありません。
何度も繰り返しますが、バーリー男爵領には赤ちゃんから寝たきりの老人まで含めて、五千人強の領民しかいないのです。
バルフォア侯爵家にはまだまだ余力があるのです。

一度はバルフォア侯爵軍を完膚なきまで叩きました。
本当なら直ぐにでも次の縁談を探さなければいけません。
私以下八人の姉妹のうち、上の四人は今回の件で婚約が解消されたのです。
それでなくても婚約解消で汚点がついたのです。
これ以上条件が悪くならないように、一歳でも若いうちに新たな縁談を探さなければいけないのです

ですが私たちには色恋にうつつを抜かす暇などありません。
次のバルフォア侯爵家の侵攻に備えなければいけないのです。
前回の失敗にこりて、今度は我々の交易日時に合わせて侵攻軍を送り込んでくるでしょう。
バルフォア侯爵は同じ失敗を繰り返すほど愚かではないのです。

「おぉぉぉぉい!
ネイピア男爵家のヴィクトルだ!
今日はバルフォア侯爵家の軍使としてやってきた。
城門を開けて中に入れてくれ!」

ヴィクトルが約束を破ってバルフォア侯爵軍に加わっています。
私から見ると腹立たしいことですが、彼には彼の事情があります。
バルフォア侯爵のお願いを断れば、敗戦の汚名をそそぎたいバルフォア侯爵の生贄になって、ネイピア男爵家が攻め滅ぼされてしまいます。
彼としても、自分の名誉を汚しても、言う通りにしなければいけないのでしょう。

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