「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第7話

正直あんな横柄な男のために料理を作りたくはありません。
騎士様だか何様だか知りませんが、作りたくありません。
ですが店主に店のためだと言われれば、作らないわけにはいきません。
問題は材料です。
相手は身分ある騎士様ですが、この店は庶民のための店なのです。
高級な食材などありません。

「デュランダル。
騎士に出したら怒られる食材ってあるの?」

「そうだな、このヒメジという魚はやめた方がいいな。
時代遅れの成金の象徴だと言われている。
金持ちが好む野ウサギはここにはないし、フォアグラもない。
無難なのは身分に関係なく食べられる豚肉とソーセージだな」

なるほど、豚ね。
私が教わった料理の歴史では、これくらいの時代では豚肉は、軟らかく煮て食べられるか、煮てから軽くソテーしていたはず。
ここの店主にも豚肉は煮て出せろ言われてるから、間違ってはいないと思う。
もっとも、あのいいかげんな神が創った世界だから、料理はあちらの世界から来た者が発展させていて、違う流れができているかもしれない。

まあ、いいわ。
どうせ作ろうと思って準備していた料理があるから、それを作ってみましょう。
問題は完全に材料がそろっていない事ね。
古く硬くなったパンからパン粉は作ってある。
油はラードがあるからだいじょぶ。
塩はあるけど胡椒はないからそれはあきらめる。
問題は卵がない事。
この時代だと養鶏が成功していないのかな?

まあ、ないモノは仕方がないから。
卵の代わりにヨーグルトを使いましょう。
牛アレルギーだと困るけど、この時代、いえ、この世界にアレルギーがあるのか分からなしい、本人が自主申告してくれないとどうしようもないモノね。
自己責任、自己責任。

一度煮て柔らかくなっている豚肉の水分を丁寧にとります。
ヨーグルトで和えて、本当は三十分ほど寝かせたいけど、急がないと騎士様が怒るから、それはあきらめるしかありません。
丁寧パン粉をつける
ラードの量が限られているから、ギリギリ全部つかるくらいのラードで揚げる。
本当は豚肉の厚みの倍は欲しいんだけど、ないモノは仕方ないよね。
あげる温度や時間は、身体が覚えている感覚を信じるしかないわね。

問題は付け合わせなんだよね。
とんかつにはキャベツの千切りが定番なんだけど、この時代の野菜を生で食べたら絶対に寄生虫にやられるよね。
砂糖があればグラッセを作るんだけど、この店に砂糖なんかないし。
そうしたものでしょう?

「なんだこの香りは?!
いったいどんな料理を作っているんだ?!」



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