「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第5話

「カーテナ、これはあまりに酷くないか?
俺たちは聖剣や聖鎧と呼ばれる存在なんだぜ。
それが、料理包丁や料理着に変化しろなんてひど過ぎるぜ!」

「デュランダルは刃物だからまだましじゃないか。
俺なんかオタマだよオタマ!
なにが悲しくて、食材を混ぜなきゃいかんのだ!」

デュランダルとモーリスが文句を言っていますが、諦めてもらうしかありません。
なにが起こるか分からない異世界です。
神様がくれた武器や防具を手放すほどバカではありません。
ですが、剣や鎧がいつも必要かといわれれば、不必要です。
敵に襲われた時に剣や鎧に変化してくれればいいのです。
普段はいつも使う調理具になってもらいます。

「文句言わない!
文句なら私に貴方たちをつけた神様に言いなさい。
今は黙って料理を作る!
包丁やオタマがしゃべっていたら店主が不思議に思うでしょ!」

私は話好きのデュランダルに色々聞きました。
最初は全員から話を聞いたのですが、聖なる武器や防具だからといって、同じ性格ではないようです。
デュランダル以外は必要のない時には話をしません。
デュランダルだけが話好きで、常時誰かと話していたいようです。
だからデュランダルから話を聞くことにしたのです。

デュランダルの話では、神様は私をこの国で暮らさせたいと思っていたようです。
異世界から来た勇者として、魔獣と戦わせたかったようです。
デュランダルからの視点だと、この世界の神様は、私たちのいた世界のファンタジー小説に感化され、自分の世界創造の参考にしたようなのです。
時間の流れが違うので、というか、時間の流れにさえ干渉できる神様だそうです。

その力を駆使して、私の世界の神々に交渉して、ファンタジー小説好きの魂を集めて、促成で世界を創り出したというのです。
なんともいい加減な神様です。
私の事も、何の調査もせずに、私たちの世界の神様に勧められるまま、魂を受け入れたというのです。
巻き込まれた私はいい迷惑です。

まあ、私にはどうしようもない事で、思い悩んでも仕方ありません。
料理を作る事を前提に、自分のお店を持つことを目標に、この世界の事を勉強していこうと決意しました。
それには開業資金を貯めなければいけませんし、常識を知らなければいけません。
デュランダルに聞けば教えてくれますが、露店でお客さんの前にして、包丁に話を聞くわけにはいきません。

だから厨房が奥にある料理店で働くことにしたのです。
開業資金を貯めながらこの世界の常識を身につけるには、それが一番だと思ったのです。
神様に与えられた武器や能力を利用して狩りをしないのは、決して神様への意趣返しではありません。
私が慎重な性格だからです。
そう心に繰り返しました。
嘘だと見抜かれてるかもしれませんが。


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