「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第3話

「ああ、聞きたいことは分かっているよ。
父親と母親の事だね。
彼らが死んだら、向こうの神が気持ちを確認してくれるよ。
君のいるこっちに来るか、それともあちらに残るかを。
君も今直ぐ父親と母親に死んで欲しいとは思わないだろ?」

この自称神の言う通りです。
せっかく助かった両親に、死んで欲しいなどとは思いません。
思いませんが、寂しいのは確かです。
どうせなら両親が亡くなるまで待ってくれればいいのに。
私をかわいそうだと思うのなら、それくらいの事はしてくれてもいいと思うのです。

「ああ、まあ、なんだ。
全部神の都合で悪いんだが、色々あるんだよ。
それにこう考えてくれないかな。
こっちの世界なら、僕がある程度の優遇を与えてあげられる。
記憶を残したまま産まれる事もできるし、向こうにいた時の姿のまま人生を始める事もできる。
そう、今のその姿でだよ。
今まで覚えた料理の知識も技術も忘れないよ」

魅かれてしまいました。
とても魅力的な提案です。
ですが、腹も立ちました。
相手は神様だと自称しています。
私が何も口に出していないのに、思っただけで神様に伝わっています。
私の望みなんて手に取るように分かっているのでしょう。
ずるいと思うのです!

「ハハハハ、ごめんよ。
君の思っている通りだよ。
確かに狡いよね。
でもそれは、誰がどの神と交渉する時にも起きる事なんだよ。
だからそれは諦めてもらうしかないね。
それと、君に与える優遇なんだけど、魔力や魔法はどうする?
こっちの世界には魔力や魔法があるんだよ」

そんな事、急に言われても困ります。
こっちの世界の事は全く分かりません。
友達が魔法のアニメや漫画の話をしていましたが、私は料理以外の興味がなかったので、魔力の事も魔法の事も分からないです。
分からないことを今直ぐ決めろというのはひどすぎます!

「そうか、そうだね。
確かにひどいね。
でもね、僕は神様だから、もし君が死んでしまうようなことがあっても、生き返らせてあげる事もできるんだよ。
だからとりあえず一度やってみればいいんじゃないか?」

本当に神さまはデリカシーがありません!
死んだばかりで混乱している私に、死んだら生き返らせてあげるから、とりあえず人生を始めてみたらなんて、人生を軽く考えすぎです!

「ああ、分かった、分かった、分かった。
もう何も聞かない。
とにかくやってみな。
なんだよ、ちょっと違い過ぎるよ。
あっちの世界の若者は、魔力や魔法が大好きで、スキルを与えると言えば、喜んで異世界に来るって聞いていたのに!
予定していた優遇策は全部与えるから、とにかく人生やり直しな」

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