「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第9話

「もう身代金が届いたのですか?」

「はい、巫女様。
ですが金銀財宝だけではありません。
奴隷を金銀の代わりに送りつけて貴族士族もおおいです」

何と恥知らずな事でしょう!
私の優しさに付け込んできました!

「誰の献策か直ぐに調べてください」

「承りました」

恐ろしく頭の切れる者が権力の中枢にいます。
私が徴兵された領民を解放したのを知り、多くの奴隷を押し付けて、兵糧攻めにする心算なのでしょう。
私が冷徹な指導者ならば、奴隷を送り返して兵糧攻めを防ぐでしょう。
ですが私にはそのような決断はできません。

それと敵は私が水龍様を使って王都を襲わせないと読んでいるのかもしれません。
水龍様ほどの強大な力を持つ方は、力を加減できません。
人間相手に丁度よい強さの攻撃などできないのです。
水龍様が王都を攻撃されたら、多くの民が巻き添えになるでしょう。
罪のない召使い達が死んでしまいます。

「ああ、それとピエトロ。
全ての奴隷を受け入れた場合に必要な食糧の量。
予測される移民希望者が加わった場合に必要な食糧の量。
かさ増しした食糧を配給した場合はどれくらい食糧が必要になるのか、全て計算してください」

「承りました。
奴隷達の実力に応じて、開墾や狩りに投入してもよろしいでしょうか?」

「構いません。
彼ら自身の力で食糧が集められるのなら、それが一番です。
ですがそのような者がいるのですか?」

「残念ながら、老齢な者、若年者、病弱な者ばかりでございます。
働きを期待できる者は少数です」

「……分かりました。
身代金の代価としての奴隷ですから、働けなければ価値はありません。
むしろ負担になります。
人質に奴隷を会わせてください。
こんな奴隷に価値はなく、むしろ食糧を浪費する存在なので、身代金を値上げすると宣言してください。
戦争に勝つために、ハミルトン王家は人質となって貴族士族を見殺しにする気で、このような卑怯な策を弄したと、厳しく糾弾してください」

「承りました。
人質は返還しないのですね」

「そうです。
アレッサンドロ王太子とハミルトン王家が卑怯な手を使ったと伝え、今まで以上に厳しい労働をさせてください」

「承りました」

さて、私がやれるのはこれくらいでしょうか?
領民と奴隷と移民を餓えさせないようにしなければいけません。
本当は同じ待遇にしたいですが、そんな事をすれば、領民の不満が高まってしまい、内部崩壊してしまうかもしれません。
これも敵の策略でしょう。
奴隷と移民には最低の食事しか与えられないですね……

(心配するな、巫女。
我に任せておけ)





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