「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第7話クリスティアン視点

わたし、クリスティアンはカーライル家の近衛騎士だ。
もうカーライル伯爵家などという屈辱的な爵位など名乗らない!
カーライル家は辺境に独立独歩する誇り高き家なのだ。
他者の風下の立つような家では断じてない!
水龍を崇め、水龍の巫女様に統治される、貴き家なのだ!

御当主様と奥方様を騙し討ちしたアレッサンドロは許さない!
絶対にこの手で首を取る!
アレッサンドロの手先となっている、ハミルトン王国軍も領主軍も許さない!
皆殺しにしてやりたいが、巫女様が領民に慈悲の心を示された以上、臣下たる者勝手気儘は絶対に許されない。
巫女様の一族を御守する近衛騎士として、巫女様の御心に沿う行動をとるとともに、一般の騎士達が巫女様の御心を傷つけないように指導しなければならない!

「よいか!
絶対に領民に手出しするな!
水龍様は全てをお見通しだ!
今回のハミルトン王国の暴挙に、人間に対する嫌悪感が大きくっている。
巫女様でさえ宥めるのに大変な思いをなされおられる。
ここで我ら巫女様の臣下までが非道な行いをすれば、水龍様は人間を皆殺しにされるだろう。
巫女様と巫女様の家族を残して、人族を根絶やしにされるだろう。
だから我らは、絶対に巫女様の命に背いてはならぬのだ。
分かったか!」

「「「「「おう!」」」」」

わたしは指揮下の騎士を諭し脅した。
彼らもカーライル家の騎士だ。
生まれた時から水龍様の伝説は叩き込まれている。
訓練中の従士時代はもちろん、騎士に叙勲されてからも繰り返し水龍様の伝説を叩きこまれ、水龍様を恐れ敬う心を叩きこまれている。
だから水龍様の怒りに触れないようにと言えば、その命令に逆らう事はない。

敵軍に見つからないように密かにカーライル城を出陣し、大きく迂回して敵軍の退路を断つべく、敵軍が自国に敗走した時に待ち伏せできる場所に隠れ潜んだ。
敵軍の警戒網ギリギリの場所で、水龍様がお出ましになるのを待ち受けたのだ。

我々が潜んでいる場所からでも、水龍様の御姿が大きく見えた。
水龍様の怒りが頂点に達せられた咆哮は、事前に知り覚悟していた我々でさえ金縛りになるほどだった。
何も知らない敵軍が耐えられる威圧ではない。
鍛錬に鍛錬を重ねたカーライル家の騎士でさえ、耐えるのに体力と精神力を削り取られるのだ。
惰弱な敵国の貴族はもちろん、騎士でも耐えられないだろう。
ましてむりやり徴兵された領民兵が耐えられるものではない。

水龍様の咆哮から立ち直った我らは、ただ一直線に敵軍の本陣に向かった。
アレッサンドロの首を取る!
アレッサンドロに首を亡き御当主様と奥方様の墓前に供える!


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