「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第3話

父上が激怒してシュナイダー侯爵に詰め寄っています。
シュナイダー侯爵が顔面蒼白になっています。
でも、胆力があると思います。
失神することもなく、失禁もしていません。
父上そっくりの私がいうのは何ですが、父上の容貌はオーガそのものなのです。

身長は軽く二四〇センチを超えています。
その高身長を、並みの人間では考えられないような太い骨格が支えています。
その身体に、岩を掘り出したような筋肉が付いているのです。
シュナイダー侯爵は私の事をオーガと謗りましたが、ミュラー伯爵家にオーガの血が混じっているという噂は、大陸では半ば信じられているのです。

そんな父上に威圧されて、顔面蒼白になりながらも対峙するのは、とても勇気が必要です。
私は心無い言葉に傷つきましたが、シュナイダー侯爵だけが言っている事ではないのです。

「何故俺が貴様などと決闘せねばならん。
俺は侯爵だぞ!
伯爵が侯爵に決闘を申し込むなど無礼にも程があるわ!」

「ならば僕が決闘を申し込みましょう。
私なら同じ侯爵家です。
まだ家督を継いでいませんが、嫡男として家の全権を預かってこの場にいます。
ソフィー嬢を揶揄した陰湿な悪口。
ミュラー伯爵家への無礼。
どれもワグナー王国貴族の品位と名誉を傷つけた、恥知らずな行為です。
それによってクライン侯爵家も著しく名誉を傷つけられました。
シュナイダー侯爵に決闘を申し込みます」

「な?
何をいっているんだ?
これは、王太子殿下の御意向だぞ?!」

「黙れ不忠者!
全ては貴君が王太子殿下を唆したのであろう!
娘を未来に正妃にし、王国の実権を握ろうと、殿下を誑かしたのであろう!
そうでなければ私の決闘申し込みに王太子殿下の名を出したりしない。
ここで王太子殿下の名を出せば、殿下が決闘に出なければならないのだぞ!
この卑怯者が!」

ああ、知らない人が出てきました。
クラウゼ公爵の味方なのでしょうか?
ですが、もうやめてください。
争いが長く続くほど、私が哀しく苦しいだけなのです。
膝を折り、背を丸め、首を突き出して少しでも小さく見せようとしているのに、それでも普通の令嬢より頭二つ分背が高い私です。
好奇と同情の眼に晒されるのはとても辛いのです。

「殿下が決闘をする?
馬鹿な事を言うな!
何故殿下がこのような化け物と決闘せねばならん。
近衛騎士で押し包んで殺してしまえばいいことだ!
ここで化け物を討ち取れば、ワグナー王国の武勇は大陸中に鳴り響き、攻め込んで来る国もなくなる。
王太子殿下がオーガの混血児と結婚する必要もなくなるのだ!


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