「ざまぁ」「婚約破棄」短編集3巻

克全

第3話

それでも王太子殿下は私を護ろうとして下さいました。
最後の最後まで護ろうとして下さいました。
ですが王家の力が衰え、クレーマー侯爵家の力が王家を凌ぎだしているのです。
ルートヴィッヒ侯爵家を乗っ取った事で、正面からクレーマー侯爵に抵抗する家がなくなっていたのです。
どの家も乗っ取られるのは嫌ですし、愛する子供を私のような境遇にしたくはないのです。

最後は、王太子殿下の側近が命懸けで諫言したのです。
私を切り捨てて罠を仕掛けましょうと。
私をクレーマー侯爵やオットーが謀殺した証拠をあげて、二人を処分しましょうと提案したのです。
最初は反対してた王太子殿下も、最後は認められました。

私としては寂しく哀しい事ですが、王太子殿下の御立場ならば仕方ありません、
知勇兼備の殿下が暗殺されるような事になれば、王族は滅ぶことになるでしょう。
そして多くの貴族が潰され乗っ取られるでしょう。
それだけではありません。
民が重税と圧政により塗炭の苦しみを味わう事になるのです。
クレーマー侯爵家とルートヴィッヒ侯爵家の領民のように。

最後は民のために見捨てられましたが、私は王太子殿下に心から感謝しています。
王太子殿下の御陰で、時間を得る事ができたのです。
母上の敵を討ち、ルートヴィッヒ侯爵家を取り戻す力を得るための、宝玉のように貴重で大切な時間を、王太子殿下は私に与えて下さったのです。
だからこそ、私は王太子殿下と側近の方々の動向をしっているのです。

邪悪な方法だという事は知っています。
こんな方法を使えば母上様が哀しまれると分かっています。
ですが仕方がなかったのです。
幼い私には他に方法などなかったのです。
そう、悪魔の手を取る以外の方法などなかったのです。

「魔王ルシファー、私に力を貸してください」

「ああ、我が力を貸してやろう。
母親の敵を討ち、家を奪われた恨みを晴らすがいい。
どうやって恨みを晴らしたい?
簡単に殺しては面白くなかろう?
時間をかけて恐怖と苦痛と屈辱を与えながら復讐するがいい」

「ありがとう、ルシファー。
それと更に勝手を言わせてもらえるのなら、この手で恨みを晴らさせて欲しいの。
遠くで苦しみ悶え死なれても満足できないの。
この眼で見て、この耳で聞いて、この手で感じたいの。
そうでなければ復讐できたと思えないの」

「いいね、いいね、とてもいいね。
その考えはとても悪魔らしい。
我が生贄に相応しい考えだ。
我に魂を捧げてくれるというのだから、助力は惜しまない。
時間はうんざりするほどある。
好きな方法で復讐するがいい」





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