「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4
第4話
「ごめん、マッテオ。
用事ができちゃった。
時間があれば待ってて欲しいの。
もっと話がしたいの。
ダメかな?」
「いや、ダメじゃないよ。
待ってるから、先に用事を済ませて来なよ」
「ごめんね、ありがとう」
幼馴染のエラに恋をして、自分の晴れの戦いを見てもらいたいマッテオにとっては、待つことくらいはなんでもなかった。
それに、しばらく会えなかった間のエラの事も知りたかった。
だから待っていると言いながら、エラの後をついて行った。
エラもついてくることをとがめなかった。
エラはライ麦パンを籠一杯に詰めて、パン屋の裏に向かった。
いや、エラだけではなく、呼びに来たパン職人の女も、籠一杯にライ麦パンと黒パンを入れていた。
何事が起こるのかとマッテオは興味津々だった。
裏には大勢の人間がいたが、全員貧しい身なりをしていた。
全員がそれぞれ何か持っている。
だが持っている物は全員が同じではなかった。
パン屋がパンを焼く時に必要な薪を持っている者もいれば、薬草や香草、胡桃や松の実といった、種実や果実を持っている者がいる。
「はい、パンはたくさんあるからね。
全部交換するから心配しないで順番をまもってね」
マッテオはとても驚いていた。
貧民街の人間がエラの言う事をちゃんと聞いて、正しく列を作っている。
生きる事が競争の貧民街では、食糧を確保するために争うのが常識なのだ。
それに、エラが交換している量を見ていると、ずいぶんと貧民達に有利な条件で交換しているようだった。
普通の商人は、弱い者からは、できるだけ買い叩こうとする
貧民街にいるような人間は、常に踏みつけにされているのだ。
今エラが交換している条件は、悪徳商人に比べれば十倍になる。
まだ小さな子供でも、必死で集めた薪で、生きて行けるだけのライ麦パンが確保できてる。
身体が弱そうな男が、それでも必死で集めてきたのであろう香草とライ麦パンを交換しているが、家族の人数分のライ麦パンを確保できたのか、ホッとした表情を浮かべていた。
マッテオは、テキパキと貧民の持ってきた物とパンを交換するエラを見て、その変わらぬ優しさと行動力に、胸が一杯になった。
自分の初恋相手の変わらぬ姿に、溢れんばかりの恋心が、これ以上は好きになれないと思っていた恋心が、さらに愛しい想いが強まるのを自覚した。
胸が痛くなるほどの恋心が、無意識に抱きしめそうになるくらいの恋心に育ってしまい、抑えがきかなくなりそうだった。
コールフィールド辺境伯家一番の剛勇騎士が、国王に上覧試合を指名されるくらいの騎士が、自分の行動を抑制できないくらい恋に狂いそうだった。
用事ができちゃった。
時間があれば待ってて欲しいの。
もっと話がしたいの。
ダメかな?」
「いや、ダメじゃないよ。
待ってるから、先に用事を済ませて来なよ」
「ごめんね、ありがとう」
幼馴染のエラに恋をして、自分の晴れの戦いを見てもらいたいマッテオにとっては、待つことくらいはなんでもなかった。
それに、しばらく会えなかった間のエラの事も知りたかった。
だから待っていると言いながら、エラの後をついて行った。
エラもついてくることをとがめなかった。
エラはライ麦パンを籠一杯に詰めて、パン屋の裏に向かった。
いや、エラだけではなく、呼びに来たパン職人の女も、籠一杯にライ麦パンと黒パンを入れていた。
何事が起こるのかとマッテオは興味津々だった。
裏には大勢の人間がいたが、全員貧しい身なりをしていた。
全員がそれぞれ何か持っている。
だが持っている物は全員が同じではなかった。
パン屋がパンを焼く時に必要な薪を持っている者もいれば、薬草や香草、胡桃や松の実といった、種実や果実を持っている者がいる。
「はい、パンはたくさんあるからね。
全部交換するから心配しないで順番をまもってね」
マッテオはとても驚いていた。
貧民街の人間がエラの言う事をちゃんと聞いて、正しく列を作っている。
生きる事が競争の貧民街では、食糧を確保するために争うのが常識なのだ。
それに、エラが交換している量を見ていると、ずいぶんと貧民達に有利な条件で交換しているようだった。
普通の商人は、弱い者からは、できるだけ買い叩こうとする
貧民街にいるような人間は、常に踏みつけにされているのだ。
今エラが交換している条件は、悪徳商人に比べれば十倍になる。
まだ小さな子供でも、必死で集めた薪で、生きて行けるだけのライ麦パンが確保できてる。
身体が弱そうな男が、それでも必死で集めてきたのであろう香草とライ麦パンを交換しているが、家族の人数分のライ麦パンを確保できたのか、ホッとした表情を浮かべていた。
マッテオは、テキパキと貧民の持ってきた物とパンを交換するエラを見て、その変わらぬ優しさと行動力に、胸が一杯になった。
自分の初恋相手の変わらぬ姿に、溢れんばかりの恋心が、これ以上は好きになれないと思っていた恋心が、さらに愛しい想いが強まるのを自覚した。
胸が痛くなるほどの恋心が、無意識に抱きしめそうになるくらいの恋心に育ってしまい、抑えがきかなくなりそうだった。
コールフィールド辺境伯家一番の剛勇騎士が、国王に上覧試合を指名されるくらいの騎士が、自分の行動を抑制できないくらい恋に狂いそうだった。
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