「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第6話追放3日目1

「お前達を苦しめた者達はこれで全員か?」

「いえ、あの、その……」

「遠慮せず正直に申せ。
それが例え実の息子であろうと、太陽神殿が選んだ聖女であろうと、大神官であろうと、国王陛下を欺き不当に税を取立てたモノは許さん。
私がこの手で叩き斬る。
この通りにな!
だから恐れず全てを正直に話せ」

「お話しします。
お話しさせていただきます。
ヘンリー様でございます。
ヘンリー様が直々にここまでこられて、聖女様のために必要だからと、村にある全ての作物を持ち去ったのでございます。
その作物を、情け容赦なく神殿長が持ち去ったのでございます!」

驃騎将軍、ポウィス侯爵セオ卿が、実の息子ヘンリーの顔を、鉄籠手を着けた手で情け容赦なく殴り、見る見るヘンリーの顔が腫れあがるのを見て、村人達はようやく安心して全てを話しだした。
その話は、本来の領主であるポウィス侯爵には情けない話だった。
跡継ぎとして期待していた長男が、教会の言いなりとなって領民に不当な税を課していたのだ。

「教会を徹底的に調べる。
ついてこい!」

ポウィス侯爵は教会を調べ、聖女メグと大神官ルーカスを断罪する証拠を手に入れようとしたが、一歩遅かった。

「これは、これは、驃騎将軍ポウィス侯爵閣下。
この度は神殿長の不始末で、お手を煩わせ申し訳ございません。
ですがご安心ください。
神殿は身内の悪事には厳格でございます。
このように、悪事を働いた神殿長以下の神官達は、自らの手で断罪したしました。
残念ながら不当に奪った税は、既に不浄な金に換えられていました。
お詫びとして不浄な金はお返しさせていただきます」

明らかに少なすぎた。
不当に奪った金銀や収穫物に比べて、返金するという金が少なすぎた。
ポウィス侯爵の怒りは頂点に達した。

「駄目だ!
その程度の侘びで、奴隷に売られた者達の恨みと憎しみは晴れん。
お前がこの悪事の黒幕ではない証拠にもならん。
事が露見しそうになり、下っ端を切る捨てただけにしか見えん。
国内全ての決定は陛下が下さられるが、領内の裁きは私が決める。
ポウィス侯爵領内で教会が不当に奪った財貨と収穫物は、現物で返してもらう。
奴隷に連れ去られた民は、一人残らず生きて連れ戻せ!
それが行われない時は、我自らが軍を率いて太陽神殿を攻め滅ぼす!」

「ほう!
よくそのような事を口になされる。
神殿長を唆し、民から不当に税を取立てたのはご子息ですぞ。
それを棚にあげて、大陸中の太陽神殿を敵に回すと言われるのか?」

「ふん!
虎の威を借る卑怯な狐よ。
お前に言われなくても、聖女に唆されたヘンリーは叩き斬ってやる。
だが息子を陥れられた親の恨み、必ずお前に叩きつけてやる。
覚悟しておれ!」

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