「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第4話追放2日目3

「おい!
何を食べている?!
昨日納めた麦が全ての食糧といっていただろう!
麦を隠し持っていやがったな!
他にも隠していやがるはずだ!
家探ししろ!」

「静かにしなさい。
治療の邪魔です」

「なんだ、この女郎が!
俺達は領主の若様、ヘンリー様の命令で税を集めているんだ。
邪魔しやがると修道女であろうと許さんぞ!」

「では答えなさい。
この家の税額は幾らですか。
この家の収穫高は幾らですか。
何割の税額を納めさせているのですか。
貴男が不当に着服している分は幾らですか。
神殿に横流ししている額は幾らですか!」

「な、な、な、何を言ってやがる!
俺達はヘンリー若様の言う通りにやっているだけだ!
収穫高や税額なんて関係ねえ。
邪魔すると神官長様に言いつけて神殿を破門にしてやるぞ!」

遠見の鏡を見ていた者達は愕然とした。
特に国王と重臣達の驚愕は大きかった。
なかでも名指しされたヘンリーの父親。
ポウィス侯爵セオは穴を掘って隠れたいほど恥じていた。
誇りある五将軍家から、恥さらしな人間を出してしまった。
長男をそんな男に育ててしまった。

「まあ、なんて酷い事をなさっていたのですか、ヘンリー様。
国や家の定めた税額以上に民から奪うなんて!
しかも神殿の名前を騙るなんて。
許されることではありませんわ。
わたくし、聖女として許せません。
ヘンリー様を神殿から破門したします」

「そんな!
私は聖女のためを思って集めただけだ。
聖女もよろこんでくれたではないか。
神殿長もよろこんで受け取ってくれたではないか」

「それは正当な税から浄財として寄付してくださったと思ったからですわ。
民を虐げたモノでしたら、絶対に受け取りはしませんでしたわ」

「言い訳は牢屋でしてもらおうか。
民を虐げて利を貪った似非聖女を厳しく取り調べろ!
動くな、ジョージ!
動けば王太子であろうと叛逆としてこの場で首刎ねる。
車騎将軍トーマス。
ジョージが謀叛を起こせないように塔に閉じ込めろ。
セオ!
今自殺することは許さん!
ヘンリーのやったことに責任を感じているのなら、驃騎将軍の責任を果たせ。
至急ヘンリーを連れて村に急げ。
全てを明らかにして、関係する者を拘束しろ。
特に太陽神殿のやったことは、一つも漏らさず調べてこい!」

「御意!」

現在この国の最高位である将軍、驃騎将軍を拝命しているポウィス侯爵セオ卿は一命を賭してでも責任を果たすつもりだった。
この異常な状況の元凶を探り出し、自らの手で斬り捨ててでも、その元凶を断ち切る覚悟だった。
そのためには、自分の息子であっても容赦するつもりはなかった。
驃騎将軍が率いるのは騎馬軍団だ。
騎士一人に替え馬四頭を引き連れ、不眠不休で駆けつけるつもりだった。

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