「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第6話

「ヒュウウウウウウ!」

最後の一人が断末魔をあげて死にました。
二十一人全員が地に倒れています。
赤い血が地を染めています。
私は優しいですから、一撃で殺してあげました。
刃物のように鋭い風魔法で喉を裂くのです。
だから断末魔が笛のような音になります。

「さて、もう大丈夫よ。
安心してこちらに来なさい」

「「「「「ヒィヒィヒィヒィ~ン」」」」」

六頭の輓馬が一斉に返事してくれました。
さすがに王家の馬車で、なんと六頭立てなのです。
この国の中で選び抜かれた、体格がよくて賢い輓馬です。
私が大した指示を出さなくても、キビキビと動いてくれます。
妊娠しているかもしれない身体で、揺れの激しい馬車に乗るのは心配ですが、それと同じくらい荒野を歩いて渡るのも不安です。

「仕方ありませんね。
やるしかありません」

これからはずっと一人で生きていくことになります。
独り言が癖になってしまうかもしれません。
これからは積極的に輓馬たちに話しかけましょう。
さて、問題は殺した盗賊達です。
本当は汚くて臭くて触りたくないのですが、これからの生活を考えれば、少しでも金目の物を回収しなければいけません。

本当に嫌なのですが、武器だけでなく、鎧や衣服などを脱がして、少しでも金にしなければいけません。
何もかも放り出して逃げ出したいくらい嫌です!
残念ですが、手持ちの金品はほとんどありませんでした。
アジトを探し当てたら、もしかしたらある程度の隠し金があったかもしれませんが、今から探すわけにもいきません。
王家の追手がいつやってくるか分からないのです。

「さあ、荒れ地を渡って国境を越えますよ」

「「「「「ヒィヒィヒィヒィ~ン」」」」」

大したお金にはなりませんが、剥ぎ取った衣服と防具と武器も馬車に入れました。
できるだけ馬車後部の護衛台に入れたのですが、入りきらなかったのです。
後で馬車の中を整理すれば、冷え込む夜に寝る場所くらいは確保できます。
お腹が大きくなってきたら働く事もできませんし、子供を生んでしばらくも働けませんから、多少の不便を我慢してでもお金になるモノは確保しなければいけません。

私がこの国を遠く離れたら、この荒れ地、荒野に封印されていた魔獣が現れ、この世を生き地獄に変えてしまうでしょう。
でもそれは仕方のない事で、彼ら自身が選んだことです。
神もこの国を見捨てて私を選びました。
気にせずこれからの人生を楽しむつもりだったのに、あの糞神が!
一旦人間の国を全て滅ぼしてから、神子に神を崇める国を建国させる気です。
絶対に思い通りにはさせません!

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