「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第17話神獣視点

全てが余の思惑通りに動いておる。
余の見せている夢を、聖女は神のお告げだと信じている。
それを聞かされたカデンも、その通りに動いている。
余の思い通りなのに、神が感謝されるのは、とても腹立たしい!

この怒りは、聖女に呪いをかけた黒幕に叩きつけることにした。
まだ誰が相手か分からないが、聖女を助けることで鼻を明かすことができる。
カデンは思い通りにせっせと動いてくれた。
多くの人間を集めて、聖女が聖域から運んだ穀物を俵詰めしている。
俵詰めが終わった穀物を村や町に運び、それを対価に大量の奴隷を購入した。

「がんばれよ!
ひと仕事終わったら腹一杯食わせてやるからな」

「「「「「はい!」」」」」

藁で俵や縄を作っている奴隷たちが、嬉しそうに返事している。
毎日三度お腹一杯の食事ができるなど、奴隷では考えられない待遇だからだ。
少々仕事がきつくても文句などないのだろう。
いや、そもそもここにきつい仕事などない。
どんな仕事も自分たちの食事につながるから、喜び勇んでやっている。

単に腹一杯にするだけなら、穀物だけを食べさせればいい。
だがそれでは病気になってしまう。
バランスよく食べないと、眼が見えなくなったり皮膚が病んだり死んだりするので、聖女がそれを気にして、穀物に加えて果物を大量に作り運んだのだ。

人間どもは喜んでそれを食べた。
小麦のパンも喜んだが、オリーブオイルを加えた大麦粥に果物を浮かべて食べるのが楽しみなようだ。
特に喜んだのはふんだんに塩が食べられる事だった。
どうも奴隷には満足に塩が与えられていなかったようだ。
聖女が大地から取り出し集めた塩に群がっていた。

彼らは人間らしく食い意地が張っている。
特に酒に対する執着が激しい。
聖女が与える穀物からエールやウィスキーを造るだけでなく、せっかく与えた果物からもワインやリンゴ酒などを続々と造りだしていた。
自分たちの家より先に、醸造用の建物を優先的に作るのだからあきれてしまう。

二月ほどで、この国中の奴隷が集まったのではないかと思われるくらいの集団となり、王家や貴族もようやく警戒を始めたが、もうどうにもならん。
奴隷たちは聖女が育て刈った竹を、槍にして武器として使えるようにしている。
材木から作った鎧や盾も完成している。
そもそもカデンが最初に集めたのは、自由戦士という一騎当千の漢を中心に、傭兵や冒険者だから、それぞれ自前の武器を持っている。

さて、そろそろ次の段階である!
城や砦を築かせて、王家や貴族と一戦交えてもらう!

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