「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第19話

「どうするセイラ?
セイラが望むのなら、マクリンナット公爵家を支援しよう。
セントラスドネル王国内だけではなく、皇国内に領地を与えて貴族に取立てる。
その方がセイラの後盾ができて安心だろう」

セントウィンルストン皇国に連れてこられて半年で、私が密かに恐れていた事が現実になってしまいました。
実家のマクリンナット公爵家が私の現状を知ってしまったのです。
あの身勝手なノエル国王と、嫌になるほど貴族らしい父です。
私が皇太子の婚約者だと知れば、その関係を利用とするのは当然です。

多少の八つ当たりはしましたが、肉親の情を抑えることが出来る王です。
自国の公爵令嬢が皇太子に妄執されていると知れば、その力を利用します。
皇国の力を背景に、周辺国を圧迫するでしょう。
侵攻併合まではやらなくても、領地の割譲や利権の譲渡は迫るでしょう。

嫌になるほど貴族らしい父です。
アロンを処刑しアメリアを幽閉する父です。
すでに愛人に後継者にする子供を妊娠させていると聞きます。
私の事を知れば、皇国内に領地と爵位を得ようと動くのは当然です。
それが貴族として普通の事なのは、皇太子殿下の発言でも明らかです。

ですが、私は嫌です。
ノエル王と父に利用されるのは絶対に嫌です。
復讐したいとまでは思いませんが、利用されるのだけは絶対に嫌なのです。
それよりは、私自身の力を高めるべきです。
父に爵位や領地を与えても、風向きが変わったら平気で私を切り捨てます。
嫌になるほど貴族らしい父なのです。

「その必要はありません、アレク様。
そんな領地や爵位があるのでしたら、私にください。
王も父も、私を利用しようとするだけで、危険になったら私を切り捨てます。
どれほど優遇しようと、自分達の利益が最優先なのです。
嫌になるほど王侯貴族らしい人達なのです」

「そうだな。
そういう連中であったな。
確かにあんな奴らに領地や爵位を与えても無駄であったな。
だが表向きは、セイラに与えるというよりはルイスに与えるといった方がいい。
セイラに多くの爵位を領地を与えるのは、皇帝陛下も難色を示している。
どうするべきか?」

皇国のやり方にはまだ慣れていませんが、色々慣習法があるようです。
皇后に権力が集まり過ぎるのを警戒しているようです。
まあ私はまだ皇后ではなく、皇后に成るかもしれない皇太子の婚約者でしかありませんが、それでも警戒されているのですね。

まあいいです。
確かに私の権力はこの半年で大きに強くなりました。
信用信頼できる側近とまでは言えませんが、側近くに仕えてくれる人間が多くなりました。
一番大きかったのは、皇太子殿下の扱い方が上手くなった事でしょうか。
アレク様と呼ぶと、デレデレになります。

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