「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第4話

セントラスドネル王国から大陸連合魔法学院までの旅。
色々ありました。
本当に色々あったのですが、それはまた機会があればお話しします。
大切なのは学院内での話です。
これがまた色々あるのです。

そもそも魔力も魔術もなくなった世界ですから、魔力と魔術を学ぼうとする者はほとんどいませんし、王家王国からの資金援助もなくなります。
学院で学ぼうとする者は変わり者しかいませ。
学院も資金難にあえいでいます。
今はかろうじて、魔力魔術の研究の副産物から得られる利益で、学院を維持しています。
それと、国元にいられない訳ありを受けいる利益です。
そう、私のような訳ありがいるのです。

一応望めば側近や護衛を連れてくることが可能です。
昔は、王族や皇族が、百を超える家臣を引き連れて学院に留学していたそうです。
そのために借りる部屋の賃料や、消費される食糧や消耗品だけでも、相当なお金が学院とその周辺に流れたそうですが、今は皆無に近い状態です。
そういう私は、クレア、ノエミ、ミレナの三人の戦闘侍女を連れてきました。

三人は私との同行を強く父上に願ってくれました。
こんな先行きの分からない私についてきてくれました。
私についてきたら、ノエル国王に睨まれるかもしれません。
もうマクリンナット公爵家には戻れないかもしれないのです。
私は彼女たちの忠誠にこたえられれるでしょうか?
まあ、同行を許可してくれた父上にも感謝してはいます。

「お初にお目にかかります。
私は平民出身ながら学級委員をさせてもらっている、アレクと申します。
先生からセイラ様に学院を案内しるように命じられました。
宜しいでしょうか?」

「……ええ、宜しくお願いするわ、アレク殿」

私はあまりの美形に驚き、直ぐに返事ができないでいました。
左右と後ろに控えている、戦闘侍女三人も同じです。
いえ、私以上に見惚れていたようです。
熱く切なそうな溜息をもらしています。
どれほどの女誑しなのでしょうか?

光り輝く金糸で作られたような髪が、僅かな動きでもサラサラと流れます。
瞳は左が蒼玉で右が紅玉のオッドアイです。
服から見える肌は、極東だけで創り出される白磁のように白く艶やかです。
そして何よりもその声の美しさです。
海の男を惑わすという伝説のある、セイレーンの声かと思うほどの美声です。

私はアレクに学院各所を案内してもらいましたが、最初の頃の記憶がありません。
アレクに見惚れてしまっていたのでしょう。
そのため、後で戦闘侍女に聞き直すことになりましたが、彼女たちも何も覚えていませんでした。
しかたなく四人でまた学院各所を確認して回ることになりました。
色男おそるべしです!



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