「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第8話

不本意です!
なぜこのような事になってしまったのでしょうか?
全てはエリヤとシャーロットが悪いのです。
何度二人の事を心の中で罵った事でしょう!

「それで昨日の状況はどうだった。
我が領地での実験ははかばかしくない。
普通の肥料と同じ効果は得られるが、促成や豊穣の効果はなかった」

「申し上げさせていただきます。
農民や殿下が派遣してくださった学者殿の話では、一日で十日分の成長がみられるとのことでございます。
豊穣の方も、通常の五倍の実りが見込まれるとの事でございます」

「ふむ、年間で考えれば、五十倍の増収が見込まれるという事だな」

「はい、そうなります」

「トレント様様だな。
ああ、その鴨のロースとはなかなか美味いぞ。
食べてみろ。
オレンジソースとの相性が抜群だ」

「はい、ありがとうございます」

なぜ私が毎日リアム王太子殿下と会食しなければいけないのでしょう?
不可解です。
納得いきません!
いえ、嘘です。
全部トレント様が悪いのです。

王太子殿下と魔境の検分に行った時に、なんの因果かトレント様が現れたのです。
しかもトレント様に気に入られてしまったのです。
殿下ではなく、私だけが気に入られてしまったのです。
普通なら幸運だと喜ぶところなのでしょう。
殿下が家臣の幸運を妬まれない心の広い方なのも含めて、喜ぶべきなのでしょう。

ですが、その反動と副作用がが大きすぎます。
王太子殿下がトレント様の加護を受けた者と、受けていない者の差が知りたいと、研究報告することを命じられたのです。
やっと殿下のお供が終わると安堵していた私には、信じられない不幸でした。

それが王都に戻った今も続いているのです。
しかも、なぜか、朝から晩まで相手することを命じられています。
いくらい研究熱心とはいえ、三十日もの間、朝餐からはじまって晩餐まで側にいろと言われるのは、本当に困るのです。
肩が凝ってしかたありません。

まあ、さすがに当初よりは慣れました。
緊張感も少なくなりましたし、肩凝りもマシになってきました。
侍従や侍女、護衛たちとも打ち解けられるようになっています。
時には冗談口さえきけるようになりました。
ですが、それでも、全く平気かと言われれば、逃げ出したいと答えます。

「ああ、それとバルフォア子爵に伝えておいて欲しいのだが、今年一年の検知の結果次第で、領地の石盛りを見直す。
場合によったらバルフォア子爵家は侯爵家に陞爵される。
そのつもりでいるようにとな」

ああ、父上が寝込んでしまわれる。

「心配しなくていい。
トレント様の寵愛がいつ失われるか分からんからな。
毎年石盛りして実りが元にも戻るようなら子爵家に戻す。
早い話が臨時税をかけるための方便だ」


「「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く