「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第4話

「あの、その、リアム王太子殿下。
バルフォア子爵家は領地が痩せていて、作物の実りが悪いのです。
ほんの少しの天候の悪化で不作凶作となり、民が飢えてしまうのです。
そのこで、あの、その」

「はっきりせん奴だな!」

「ヒィィィィ!
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

「……そう怯えるな。
怒っているのではない。
褒美をやるといっておるのだ。
そうか、土地が痩せていて領民が困っておるのだな。
だったら褒美に領地を与えようではないか。
さて、どの領地がいいかな?
あまり名義を動かすと官僚どもが嫌がるからな。
官僚どもの恨みがアルテイシア嬢に向かっては意味がないしな。
ドロヘダ侯爵領かソモンド伯爵領から割譲するのなら、官僚も面倒がらんだろう。
ふむ、あそこがよい。
辺境にあるドロヘダ侯爵領でも最も奥地にある、魔境と隣接した場所がある。
そのあたりから一万石を割譲しようではないか。
バルフォア子爵家は一万五千石だったな?
併せて二万五千石なら爵位を変える必要もない。
あの辺は大きな川も流れているから、魔境の豊かな土を本領に運ぶのも便利だ。
うむ、それがよい。
それでよいな、アルテイシア嬢」

「はい、ありがとうございます」

「その顔は何もわかっていないな。
まあよい、私を信じろ。
アルテイシア嬢にもバルフォア子爵家にも悪いようにはせん。
まずは賠償金を渡すから、明日バルフォア子爵と王宮に参れ」

私が混乱している間に、全てが終わりました。
嵐のような激動の一日でした。
いえ、わずか一時間です。
ですがこれで終わりではありません。
明日も王太子殿下と会わなければならないのです。
正直胃が痛いです。
気の優しい父上も同じでしょう。
いえ、私以上に胃を傷める事でしょう。

翌日夜明け前に王宮に向かいいました。
父上も私も一張羅を着こんで行きました。
騙された事で、売れるモノは全て売ってしまっていたのです。
王宮に着て行けるような服は、一着しか残っていなかったのです。

それと登城時間です。
時間を聞いていなかったのです。
それに気がついたのは、翌日の登城日になってからです。
そもそも私は、事の次第を父上に話した途端、気力が尽きてしまったのです。
急激に熱が上がって、ベットに倒れ込んでしまったのです。

私が倒れてしまったことで、父を含めた家族全員が慌ててしまいました。
登城時間の事など思いもしなかったのです。
私が倒れたことで、父は一人で登城しなければいけなくなったのです。
その事に気がついた父上まで熱を出して倒れてしまったのです。
絶体絶命でしたが、翌朝気力を振り絞って王太子宮に向かったのです。

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