「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第2話

私は予想外の言葉に身体が固まってしまいました!
私だけでなくエリヤも同じです。
同じどころか死者のように真っ青になっています。
それも当然です。
公明正大なだけでなく、厳格なうえに不正を極端に嫌われるリアム王太子殿下が、全てを調べ明らかにすると宣言されたのです。
エリヤは生きた心地がしないでしょう。

ああ、ガタガタと震えだしました。
何か言うおうとして口を開きかけましたが、氷のように冷たいリアム王太子殿下の視線を受けて、何も言えずに口を閉じてしまいました。
リアム王太子殿下は全てを知っているのかもしれません。

ああ、ああ、ああ!
エリヤのズボンの前が染みています。
あまりの恐怖に失禁してしまったのでしょう。
白目を剥いてその場に倒れてしまいました。
ブクブクと泡まで拭いています。
社交界一の貴公子という評判もこれで終わりでしょう。
明日からは失禁伯爵、小便伯爵と陰で呼ばれることでしょう。

「リアム王太子殿下!
恐れながら、恐れながら申し上げ奉ります!
今のソモンド伯爵エリヤの発言は行き過ぎだと思います。
眼が覚め次第発言を撤回させ、バルフォア子爵家令嬢アルテイシア様にわびさせますので、どうか、どうか、なかった事にしてください!」

うわ!
人を殺しかねない鋭く冷たい視線です。
横から見ているだけで寒気がしてゾクゾクします。
あんな視線を向けられているドロヘダ侯爵は生きた、生きた心地がしないでしょう。
エリヤのように粗相しなければいいのですが……

「ドロヘダ侯爵ウィリアム卿」

うわ!
終わりです!
ドロヘダ侯爵は詰みました!
家名と名を呼ぶ口調が、汚らしいモノを呼ぶようです。
蔑みと殺意が込められていると、相手にわからすような口調です。
リアム王太子殿下のドロヘダ侯爵に向けた視線は、汚物を見るようです。

「王家を騙すつもりだったか?
国王陛下や余は、貴君に騙されるような愚か者だと思ったか?
貴君は思い上がっているようだな?
だったらその才能、披露していただこうではないか。
余が貴族士族に呼び掛けて、ドロヘダ侯爵家の討伐軍を募集しよう。
貴君は自身の才覚で、王家を謀れると思っている才覚で、貴族士族に呼び掛け、謀叛軍を集めればよい。
正々堂々と戦って決着をつけようではないか」

「お許しください!
お許しください!
お許しください!
お慈悲をもちまして、寛大な処置を御願い申し上げます!
どうか、どうか、どうか!
取り潰しだけはお許しください!」

「貴君は馬鹿か?!
いや、馬鹿であったな!
馬鹿に何を言っても無駄であろうが、最後にひと言だけ教えてやる。
謝る相手が違う!
愚か者が!」

え、え、え?!
私?!
私にお鉢を回すのですか?!

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