「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第1話

「バルフォア子爵家令嬢アルテイシア。
君との婚約は、バルフォア子爵家の契約不履行で破棄させてもらう。
契約不履行の賠償金については、後日改めて話し合わせてもらう。
いいね!」

「しかしエリヤ様。
賠償金を請求するのはおかしいです。
持参金と台所領の解約不履行の罰として、婚約を解消することになるのでしたら、賠償金を請求するのはやり過ぎです」

「黙れ、黙れ、黙れ!
貴族の約束は名誉にかかわる大切なモノだ!
それを護れないというのは、相手に対して失礼であると同時に、その約束が守られることを前提に計画していたことができなくなるのだ。
そのために莫大な損害を被ることがあるし、実際に我が屋は大損害を受けることになるのだ!
その損害を賠償してもらわなければ、我が家の名誉にもかかわる。
賠償できないと言うのなら、決闘を申し込むことになるが、それでもいいのか!」

悔しい!
怒りに震え涙を流しそうになるくらい悔しいです!
真相は噂で知りました。
父上が罠に嵌められて莫大な借金を背負う事になって、我が家もいろいろと調べ、全てがドロヘダ侯爵の陰謀だと知っているのです。

ドロヘダ侯爵家令嬢シャーロット様に関しては、以前から色々と悪い噂が流れていましたから、関連して教えてくださる方が多かったのです。
醜聞で結婚相手の見つからないシャーロット様のために、莫大な持参金を用意してでも、父親のドロヘダ侯爵が結婚相手を探している事。

今までは婚約していた我が家の耳には入っていませんでしたが、若くして当主を継がれたソモンド伯爵エリヤ様が、遊興が過ぎて莫大な借金を抱えておられる事。
ドロヘダ侯爵家なら格下のソモンド伯爵家に無理を通ることができます。
ソモンド伯爵家なら格下の我が家に無理を通すことができます。
ですが王家に届けている婚約を解消するには、ある程度真っ当な理由が必要です。

そのために我が家を罠に嵌めたのです。
ドロヘダ侯爵家がその権力を使って、我が家を罠に嵌め、私が持参金も台所領も用意できなくして、婚約を解消しようとしたのです。
そこまでなら、騙された父上の不明と諦める事もできました。
婚約破棄も、卑怯下劣なエリヤと結婚しなくてすんだと、前向きにとらえることも可能でした。

ですが、罠に嵌めて多くの人の前で婚約破棄を公表した上に、賠償金まで奪い取ろうというのは卑劣すぎます。
それでなくとも罠に嵌められてできた莫大な借金があるのです。
この上に賠償金までのしかかったら、私が身を売っても返済できなくなります。
それこそ子爵家を闇で売らなければいけなくなります。
それだけは絶対に阻止しなければ、ご先祖様に申し訳がたちません!

「ふむ、名誉の問題と実損の問題か。
確かに言いたいことは分からないでもないが、公正中立な立場で正確な金額を算定する者は必要だな。
その役目、余がやってやろう」

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