「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第20話

「神よ、魔王魔族を斃す力を貸し与えたまえ。
精霊よ、この世界を護る力を貸し与えたまえ。
神獣よ、悪しき力を討ち祓う力を貸し与えたまえ」

エドアルド様がこの世の善なる全てに祈られます。
私とレベッカがその後に続いて祈ります。
どれくらいの魔力と祈願力が蓄えられているのか分かりませんが、確かに自分に何者かの力が分け与えられているのが分かります。
最初にあらん限りの魔力を魔道具に注いでいたので、分け与えられた力が身体の隅々に行き渡ります。

「自分の魔力は純粋な力となって魔道具に蓄えられる。
魔力が枯渇した所に、神や精霊、神獣の聖なる力が注ぎこまれる事で、自分も聖なる存在に近づく事ができる。
魔王魔族と戦って穢れを受けたとしても、聖なる力で穢れを払って頂ける。
だか過信してはいけない。
不利だと思ったら迷うことなく撤退するのだ」

エドアルド様がマネル王家に伝わる秘伝を教えてくださいます。
神や精霊、神獣との出会いやかかわり、敬い接する方法を教えてくださいます。
私とレベッカは、マネル王家に迎え入れてもらえたのです。
正直レベッカに対する嫉妬があります。
命の恩人である事も、心から信頼できる事も変わりありません。
ですが、だからと言って、エドアルド様の視線がレベッカに向けられる事に、嫉妬してしまうのです。

姉妹や親友同士で、同じ男性を愛し仕える話を聞いた事があります。
でも私には信じられません。
愛する人の視線、いえ、愛情を独占したくなるんです。
他の女性にとられるのは嫌なのです。
嫉妬してしまうのです。
その女性を憎んでしまうのです。

「レベッカにはいずれ弟の護衛を頼む事になる。
パオラもそれで構わないか?」

恥ずかしく情けないです。
私の嫉妬をエドアルド様に見抜かれてしまっていました。
隠していたつもりですが、隠しきれていませんでした。
あれほど助けて欲しいと懇願していたのに、今では嫉妬しているなんて、絶対に知られたくなかったのに。

エドアルド様にだけではありません。
レベッカにだって知られたくはありませんでした。
命懸けで、誇りと名誉まで失って、私を助けてくれたレベッカ。
そのレベッカに嫉妬を感じるなんて、恩知らずの人非人ではありませんか!

「申し訳ありません、エドアルド様。
私の願いを聞いてくださったのに、命懸けで助けて下さったのに、私の醜く身勝手な想いでエドアルド様の誠心を穢してしまいました。
いえ、エドアルド様だけではありません。
命の恩人であるレベッカに、このような醜い想いを向けてしまってごめんなさい」

私は二人に心からわびました。
わびるしかありませんでした。



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