「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第7話アリーチェ視点

マッシモ殿が決断してくれて助かった。
これでようやくあの腐れ外道を殺すことができる。
あの色情狂の異常性欲者のせいで、大切な配下を無駄死にさせてしまった。
下手に美しい女を送ったせいで、嬲り殺しにされてしまった。
マルタなら、本気を出せば逃げることもアンドレアを殺す事もできただろうに、正体が露見して仲間を巻き込まないように、身体中を切り刻まれながら犯されるという苦痛に耐えて死んでいった。

マルタの遺体が犬の餌にされたと聞いた時の怒りは、いまだに忘れない。
思い出すたびに、知らず知らずのうちに奥歯を噛み締めてしまう。
アンドレアがオートヴィル王国の王太子という地位にいなければ、とうの昔に殺していた。
同じように思っている仲間は沢山いる。
何度密かに殺してしまおうかと考えたことか!

本当は苦しめて苦しめて、苦痛で狂人にしてやりたい。
狂気に囚われたまま見世物にしてやりたい。
だがそのような方法は、殿下の名を汚してしまう。
腹立たしいが、確実に殺す。
殺し損ねるのが一番悔しいからね。

「配下をあのようなやり方で殺された気持ちは分かるが、冷静にやってくれよ。
アリーチェの後で仕掛ける俺達は危険が多いんだ。
怒りで失敗でもされたら困るんだ。
ああ、怒らんでくれよ。
仲間をあんな殺され方したアリーチェたちの気持ちが分かるからこそ、冷静ではいられないのも分かるんだ」

「言葉には気を付けてくれ。
女組は身体を張って情報を得ることが多いんだ。
それだけ身元がバレる可能性も高く、バレた時には自害する覚悟も準備もできているんだ。
マルタの事もみんな飲み込んでいる。
飲み込んでいるからこそ、今日までアンドレアを見逃してきたんだ。
ようやく殺せるとなったんだ。
確実に殺す。
絶対に失敗はしない」

「分かった。
余計な心配んだったな。
すまん」

「分かってくれればいい」

いかんいかん。
内心の怒りと葛藤を表情に現してしまっていた。
フラヴィオが心配して言葉をかけるのも当然だね。
これでは暗殺隊の女頭目失格だ。
気を引き締めて成功させないといけない。

問題はあれ以来若い女をオートヴィル王国の王宮に入れていないことだ。
下手に若くてきれいな女を入れたら、アンドレアに嬲り殺しにされてしまう。
私が報告を受けただけでも、千を超える侍女が嬲り殺しになっている。
全員警備の犬や虎に食べさせているから、家に戻る途中で誘拐犯に連れ去られて行方不明になったことにされている。
そなところに若いくてきれいな女を送り込んでも、諜報網は作れない。
一度は引退した老女を送り込んで何とか奥の情報網を構築したけれど、暗殺を決行するには新たな刺客を送り込まないといけない。
私自身が乗り込んで確実を期す!

「「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く