「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第10話

「ああ、お姉様!
全て私が悪かったのです。
私がバカで、王太子殿下の甘言に騙され、お姉様を裏切ってしまいました。
今その天罰を受けるのは当然なのです。
それなのに、お姉様に身代わりになっていただくなんて、絶対にできません」

「いいから早く領地に戻りなさい。
ルシアが領地に戻ったら、私も直ぐにここから逃げ出します。
それに以前の事も今回の事も、全く気にする必要はありません。
姉が妹を守るのは当然の事です。
さあ、早く行きなさい。
ゾーヤ、頼みましたよ」

「承りました。
直ぐに戻りますので、それまでご自重願います」

「お姉様!」

「分かっています、ゾーヤ。
ルシア、父上とディエゴの事は任せましたよ」

私はルシアとゾーヤが逃げた後で、塔の中を確認して回りました。
最低限の設備は整えられていますが、とても公爵令嬢を幽閉するのにふさわしい場所ではありません。
その非常識さにますます怒りが募りました。
もっとジェイコブの糞野郎とエヴァに報復してやります。
これを許した国王も絶対に許しません。

(カルラ、少し状況が変わりました)

(何事でございますか、エリーニュス神様)

私は一気に緊張しました。
エリーニュス神様に切迫感がないので、命に係わる事ではないと思うのですが、それも絶対ではありません。
エリーニュス神様と人間の私では感覚が違います。
エリーニュス神様には大したことではなくても、私には生死にかかわる重大事かもしれません。

(ヒューイット王家のアンジャ王子が軍勢と共にウォード公爵領に向かっています)

(それは!
ウォード公爵家を攻撃するつもりなのですか?!)

私は一気に血の気が引きました。
ヒューイット王国はセント・レジャー王国の仮想敵国です。
攻め込まれることのないように、攻め込まれても王家の軍が到着するまで国境を守れるように、ウォード公爵家が封じられたのです。

ですが、今の状況では、とても守り切れません。
一国の大軍勢を、ウォード公爵家だけで防ぎ切れるわけがないのです。
絶対に援軍が必要なのですが、王家と対立している状況では、援軍が来る事はないでしょう。

もし援軍が来たとしても、それは表向きで、本当はウォード公爵家討伐軍かもしれないのです。
いえ、確実にそうでしょう。
ウォード公爵家とヒューイット王国軍を戦わせて、ウォード公爵家が大損害を受けてから、ヒューイット王国軍を撃退しウォード公爵家を滅ぼすことでしょう。
ここは、何か根本的な手を打つしかありません!





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