「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第3話

ウォード公爵家から届いた続報は、私を激怒させるモノでした。
なんとジェイコブの糞野郎は、ルシアに不義密通だと言い立てたのです。
自分の悪行や不実はなかったことにして、ルシアを責めたのです。
確かにルシアほどの魅力的な令嬢ならば、言い寄る男は多いでしょう。

ジェイコブの不実な浮気は有名ですから、哀しむルシアを慰めるふりをして、獣欲を満たそうとする男は星の数ほどいたでしょう。
私との一件を知っている男は、なおさらチャンスがあると勘違いするでしょう。
ですが、本当のルシアは誠実で身持ちの堅い貴族令嬢なのです。
不義密通など絶対にしていません!

「ゾーヤ。
塔に幽閉されているルシアが、口封じに暗殺されることはありませんか?」

「絶対にないとは言えません。
ジェイコブはもちろん、ヴェレカー公爵や令嬢のエヴァも危険です。
フィリップ国王も油断なりません」

ゾーヤが心配する通りです。
ジェイコブの糞野郎が一番危険ですが、今まで一度もジェイコブを諫めず、好き勝手やらせてきたフィリップ国王も、何をしでかすか分かりません。
二大公爵家と評されるウォード公爵家を、完全に敵に回すとは思えませんが、私が王都から遠く離れた神殿に籠り、ルシアを塔に幽閉している今、父ヤコブを暗殺することができたら、残るのは幼い弟のディエゴだけです。
叔父達や従兄弟達を唆して懐柔することは十分あり得る事です。

「ゾーヤ。
神々に祈る事にします。
私の私室には誰に入れないように」

「承りました、カルラお嬢様」

ゾーヤにだけは、私が神に選ばれた聖女である事を話しています。
神殿には正式な祈祷所がありますが、私は私室に個人的な祈祷所を設けています。
神殿に祀られている古き神々は数が多く、聖女と認めていただいた神だけを祈るのにはふさわしくないのです。
だから私とゾーヤだけが知る、秘密の祈祷所を作ったのです。

まあ、べつに、祈祷所がある事だけなら知られても困りません。
私室にいても神々に祈りたいのですと言えば、神殿長も神官長も問題にはしないでしょうが、どこから私が聖女に選ばれた事が漏れるか分かりません。
聖女に選ばれたことで、変に祭り上げられるのは嫌だったのです。
特に、ジェイコブの糞野郎の婚約者に戻されるのが嫌だったのです。

それに、私を聖女に選んでくださった神は、公表し難い神です。
神に貴賤などないのですが、一般受けするような神ではありません。
私の生い立ちでは、選ばれても不思議ではないのですが、私と同じように、いえ、私以上に苦しんだ人も多く、その中でなぜ私が選ばれたか不思議です。
まあ、その点は、神の気紛れと考えるしかありません。

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