「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第2話

「カルラ様、大変でございます。
ルシア様が婚約破棄されてしまわれました!」

「まさか?!
いったい何が起こったというのですか?」

唯一私について神殿まで来てくれた侍女のゾーイが、驚きの情報を逸早く知らせようと、私の私室に駆け込んできてくれました。
私はジェイコブ王太子殿下の非常識な行いのために、神殿に籠ることになりましたので、多めの婚約破棄違約金を頂きました。
それだけではなく、神殿近くに台所領もいただきました。

私が王太子殿下の名誉を守るために、自分から婚約解消を申し出たので、表向きは婚約破棄違約金ではありませんが、実質はそうです。
そのお金を献金することで、広く住み心地のよい部屋を神殿から購入しました。
表向き上級神官の役目を頂き、衣食住の面倒を見ることを条件に、貧しい修道女を侍女として使う事も許されました。

婚約破棄騒動から三年、神に祈る穏やかな生活を送っていました。
神殿長にも神官長にも内緒にしていますが、ある神から聖女にも選ばれています。
古くに崇められていた多くの神々を、一緒に祀って祟られないようにしている神殿なので、修行している神官や修道女の行いと経験によって、多くの神から聖人聖女に選ばれる可能性があるのです。

「ジェイコブ王太子がまたやらかしたのです。
貴族令嬢を傷ものにしたのです。
今迄は王家の権力と金で黙らせていましたが、今度はヴェレカー公爵家のエヴァ嬢で、黙らせて何もなかった事にはできなかったようです」

最悪です。
私が身を引いた意味が全くありません。
ジェイコブ王太子殿下と妹のルシアに幸せになって欲しくて、身を引いたのです。
それを、あの色情狂は、ルシアが悲しみに暮れるほど浮気を繰り返したのです。
もう王太子殿下などとは言いません。
色情狂の糞野郎で十分です!

「だからといって、何の罪もないルシアを、塔に幽閉などできないはずです。
いったいどうなっているのですか?」

「詳しい情報は続報を待たねばなりませんが、何か冤罪をでっちあげたようです」

私の護衛役を兼ねる侍女のゾーヤ。
的確な表現をするなら、戦闘侍女と言うべきでしょう。
並の騎士など足元にも及ばない強力な戦士です。
いえ、騎士どころか、家柄ではなく戦闘力で選ばれた騎士長や騎士隊長でも敵わない、一騎当千の戦士なのです。

一度ウォード公爵家の騎士団長と模擬戦をしているところを見たことがありますが、大柄な身体を生かして戦斧を変幻自在に操り、騎士団長を圧倒していました。
しかも単に戦闘力が高いだけではなく、今もウォード公爵家と綿密に連絡を取り、私に危険が及ばないようにしてくれている戦略家でもあるのです。


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