「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第5話

「はい、国王陛下」

「聖女マチルダに未開地追放を命じる。
聖女に月神アルテミス様の力が宿っているのなら、未開地を開発する事など簡単であろう」

「恐れながら申し上げます、国王陛下。
月神殿では内緒にしておりましたが、アルテミス神様は人身御供を要求する恐ろしい顔を持っておられます。
本気で未開地を開発せよと申されるのでしたら、多くの人身御供が必要です。
それと、月神殿はアルテミス神様だけを奉じておりますが、アルテミス神様にはセレーネー神様、ヘカテー神様の三つの顔がございます。
森をそのままにして恵みを得るのなら、アルテミス神様だけを奉ずればすみますが、畑にして豊穣を願うのなら、ヘカテー神様も奉じなければいけません」

「月神殿大神官ジェイコブ!
聖女マチルダの申す事は真実か?!」

「恐れながら申し上げます。
月神殿にはそのような伝承はございません。
嘘偽りでございます」

「聖女マチルダ、どういう事だ?!」

「恐れながら国王陛下。
今迄の聖女や大神官では、月神様の一面しか感じることができなかったのです。
私ならば、月神様の三面を感じることができるのです。
それを証明するために、神明裁判を要求したします」

「月神殿大神官ジェイコブ。
聖女マチルダはこういっているが、神明裁判を受ける覚悟はあるか?」

「ございます、国王陛下。
私は堕落したクラウディオとは違います。
正々堂々、神明裁判をお受けさせていただきます」

国王陛下の許可を得て、私と月神殿大神官ジェイコブは神明裁判を受けました。
私が証明したのは、月神にはアルテミス神、セレーネー神、ヘカテー神の三面性があり、私がその三面神の聖女である事です。
月神殿大神官ジェイコブが証明したのは、月神殿はアルテミス神だけを奉じていて、三面性がある事を隠していたわけではないという事です。

これならば、私もジェイコブも傷つかない神明裁判ができます。
そう私が提案すると、国王陛下も月神殿大神官ジェイコブも、無駄な争いをすることなく私に神明裁判のやり方を任せてくれました。
誰だって、焼けた鉄杭で両手を焼き肉にされたくはないのです。
神明裁判の文言ひとつで、手を焼かれたり命を失ったりするのです。
結局、私もジェイコブも嘘をついていない事が証明されました。

「この神明裁判の結果を受けて判決をくだす。
今迄月神殿を名乗っていた神殿は、本日ただいまよりアルテミス神殿を名乗り、聖女マチルダが新たに未開地に築く神殿が月神殿を名乗るように」

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