「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第1話

「アルトリア公爵家令嬢マチルダ。
貴女は太陽神殿と月神殿の両方を告発するというのですか?」

「はい、王妃殿下。
理由は違いますが、両神殿共に国の役には立っていません。
早急に改革が必要だと申し上げます」

「不遜であるぞ、マチルダ!
月神殿に拾われ、聖女として育ててもらった恩を忘れたか!?」

「黙りなさい!
今はマチルダ嬢の告発の時間です。
月神殿の言い分は、この後で聞きます。
それと今のマチルダ嬢は、養女とはいえアルトリア公爵家の令嬢です。
月神殿に拾われ育てられたことは、過去の話です。
その恩を言い立てて告発を封じる事は、絶対に許しません」

玉座で全てを聞き、決定を下される国王陛下に成り代わり、クリスタ王妃殿下が私の告発を受けた裁判を進行させてくださいます。
冷静で威厳のある進行ぶりです。
本来ならナレク王太子かティグラン第二王子の役割なのですが、あの二人には荷が重すぎるでしょう。

「では一つ一つ聞かせてもらいましょう。
太陽神殿を告発した理由は何ですか?」

「太陽神殿は、大切な聖女選びを金儲けの道具にしています。
全く能力のない者を聖女に選ぶ代償に、莫大な裏金を得ています」

「黙れ、黙れ、黙れ!
そのような嘘つきの孤児の言う事を信じてはなりませんぞ!
その者の言う事が本当ならば、ドゼル公爵家が裏金を使いミレーナ嬢を偽者の聖女にした事になります。
それが本当ならば、王国の秩序を揺るがす一大事ですぞ。
王妃殿下の公平な判断をお願い申し上げます!」

太陽神殿のクラウディオ大神官が、多くの貴族が集まっている裁きの間で、堂々とクリスタ王妃殿下を脅しています。
それは、玉座の間に座すデイヴット国王陛下さえも脅していることになります。
大陸の西方にあるこの国は、多くの神殿の支援がないと国を維持できないのです。
神殿の力が王家を凌ぐ部分が多いのです。

それだけでなく、二大公爵家も王家を凌ぐ力を持っています。
私が養女になったアルトリア公爵家と、ミレーナが聖女に選ばれたドゼル公爵家を無視しては、国家運営ができないのです。
だからこそ、有力神殿である太陽神殿の聖女と月神殿の聖女は、必ず両公爵家から選ばれるのです。

私が聖女に選ばれ、アルトリア公爵家の養女になったのも、アルトリア公爵家月神殿連合と、ドゼル公爵家太陽神殿同盟の権力闘争なのです。
本来なら私は、アルトリア公爵家月神殿連合の手先として、連合の有利になるように動かなければいけませんが、前世の記憶がある私には、そのような汚い真似は耐えられないのです。

なによりも、色情狂のナレク王太子と結婚させられるのは耐えられません。
どのような手段を使ってでも婚約を解消させて、この国から逃げてみせます。
そのためなら、どのような汚い手段であろうと厭いません。
今日まで文武に励んできたのはそのためなのです。
今日は一歩も引きません!



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