「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第1話

「やはり君しかいない、君こそ私が真に愛する人だ、どうか戻って来て欲しい」

ある日突然、私達の幸せな暮らしを壊すモノが現れました。
元婚約者のリンド王国王太子イェルクです。
彼には恨みしかありません。
私に不義密通の冤罪を被せて、婚約を破棄して追放刑にしたのです。
それを今更、どの面下げて私の前に出るのですか!

いけません、言葉が荒くなってしまいました。
庶民として暮らすうちに、徐々に下町言葉も覚えました。
庶民は貧しい暮らしをしていますが、気のいい人も多いです。
まあ、なかにはどうにもならない悪党もいますが、そんな連中も一度ケヴィンに半殺しにされたからは、この辺りには近づかなくなりました。

「レイナの事は気にしなくていい。
あのような嘘つきはいつでも処刑するから、何も心配いらない」

私が黙っているので、不安になったのかもしれません。
聞いてもいない事をペラペラと話します。
イェルクと一緒になって私を陥れた女レイナ。
幼い頃からどうしようもなく正確が悪く、物欲と名誉欲の塊レイナ。
私の婚約者を奪うという欲望と、将来の王妃の地位が欲しくて、イェルクを誘惑して一緒に私を陥れた極悪非道な女。

でも、それでも、実の妹です。
今は殺したいとまでは思っていません。
それを、一緒になって私を陥れたイェルクが殺すというのです。
私に戻って欲しいという言葉の意味は、レイナを殺すから私に結婚して欲しいという事でしょう。
驚くほど身勝手です。

「その腹の事を気にしているのなら何も心配いらないぞ。
この国にいるうちに流してしまえば済むことだ。
そうすれば我が国の者に知られる事はない。
安心して戻ってこい」

グチャ!

ああ、帰ってきていたのですね。
私が叩く前にケヴィンがイェルクをぶちのめしました。
全く手加減しなかったようです。
即死してしまったかもしれません。
まあ、当然です。
私とケヴィンの愛の血晶。
妊娠している子供を堕胎しろ、殺せと口にしたのです。

私の守護騎士だったケヴィン。
冤罪を着せられ、無一文で国外追放された私についてきてくれた人。
八虎騎士とまで称された名誉も地位も家族も捨てて私についてきてくれました。
傷心のあまり心に異常をきたすほどだった私を、護り励ましてくれました。
そして今は私の愛する夫です。

二人の愛の結晶を殺せと言われて、手加減などできるはずもありません。
ですが、腐れ外道でも王太子です。
殺してタダですむはずがありません。
ようやく軌道に乗った薬店ですが、捨てて逃げるしかないでしょう。

「貴男、逃げた方がいいと思うのですが、貴男はどう思われますか?」

          

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