「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第8話

「魔物だ!
魔物がでたぞ!」

「近衛騎士!
なにをしているのだ?!」

近衛騎士も疲弊しているようですね。
食糧の搬入も、汚物の搬出もできていないようです。
これでは疫病が広がるかもしれません。
疫病で苦しませるのも面白いですね。
ですが今回はその前にすることがあります。

王や他の王族は無視して、アキーレヌ王太子とフィールド公爵家令嬢キアナを狙い打ちにします。
キアナが王城の中にいたのは、王太子と淫欲にふけっていたからです。
見たくなくても、遠見の鏡で監視していれば、見てしまいます。
淫欲に相応しい罰を与えてあげましょう。

バルフォア侯爵ザシャト卿を喰い殺した牙鼠を、そのまま王城に入り込ませ、王城に籠る者達を恐怖の坩堝に陥れました。
心身を圧迫するには十分な効果でした。
あちらこちらで、籠城している者達同士で傷つけあっています。
牙鼠と直接対峙した騎士も、ほとんど役に立っていません。
家柄とコネで騎士になった大半の騎士では、牙鼠を斃す事はできません。

「ギャアァアア!
痛い、痛い、痛い、痛い!
助けろ!
早く助けろ!
なにをしているか!?」

王太子が泣き喚いています。
治癒魔法で治した身体を再び傷つけられて苦しんでいます。
急所、陰部を喰い千切られてのたうち回っています。
後はバルフォア侯爵の時と同じです。
耳、唇、鼻を喰い千切られ、激痛で苦しんでいます。
ですが今は殺しません。
こんな早くに楽にさせたりはしません。

遠見の鏡を少し移動させます。
同じ部屋にキアナがいます。
キアナもほぼ同じでした。
治癒魔法で治した身体を再び傷つけられて苦しんでいます。
ただキアナの場合は、陰部だけでなく、胸も喰い千切られています。
同じように耳、唇、鼻を喰い千切られ、激痛で苦しんでいます。

「お姉様?
まだ見ておられるのですか?
早く寝られないと、体に障ります。
早く眠られてください」

「ええ、そうね。
心配してくれてありがとう。
直ぐに眠るから、心配しないで眠って」

「はい……」

エレノアに心配をかける訳にはいきません。
早々に眠らないといけませんね。
でも、結界の状態を詳細に確認しておかなければいけません。
このままでは、私が意識的にこの世界に招いた牙鼠だけでなく、角鼠や牙兎や角兎まで入り込んできてしまいます。

エレノアの想いを無にしないように、急いで結界の状態を確認します。
かなり弱くなってしまっています。
いつまでに王家を始末するのか、どういう形で収拾を図るのか、とても慎重な判断が必要になります。
エレノアにこれ以上の負担をかけたくはありません。
エレノアを女王に戴冠させてしまったら、その責任感と繊細な性格から、重圧に押し潰されてしまうかもしれません。
どうするべきか?

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品