「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第7話

「お姉様。
領地に戻らなくていいのでしょうか?」

「領地に戻ると、王家の決定に背くことになるわ。
王家に付け入るスキを与えてはいけません。
ここは素直に国外に出るのです。
領地の事はレノヴァに任せれば大丈夫です」

私は遠見の鏡をエレノアに見せながら色々と話します。
今迄は互いに忙しくて、幼い頃を除いて親しくする事はできませんでした。
でも今、ようやく血の繋がった姉妹として一緒に旅しています。
追放刑の旅ではありますが、これほどの幸せはありません。
まあ、時に邪魔者も現れますが、私の敵ではありません。
側に近寄る前に、エレノアを不安にさせる前に、犬に食わせて終わりです。

「お姉様は王家内で殺し合いをさせるおつもりなのですね」

「王族だから何をしても許されるわけではありませんよ。
エレノアが帝王学を学んだように、王族も学ばねばならないのです。
特に一国を背負う国王や王太子は、完璧に学ばねばなりません。
それをあのような不始末をしでかしたのです。
責任を取らなければいけません。
エレノアは、自分の私利私欲で法を歪めるのですか?」

「いえ、そんな事は絶対しません。
万が一気の緩みで間違えることがあっても、誤魔化さず過ちを正します」

「分かっているのなら、王と王太子が罰を受けるのは当然だと思いませんか」

「……はい、当然です」

「しかも私が罰を下すわけではないのですよ。
彼らが己の過ちを正さず、更に私利私欲に走り、自滅するだけです。
なぜそれを、被害者である私達が、命を賭けて助けなければいけないのですか?
私達が命を賭けて助けるのは、家臣領民ですよ。
その大切な命を、犯罪者のために危険にさらすなど、責任放棄以外の何物でもありませんよ」

「はい、申し訳ありません。
考え違いをしておりました」

「分かればいいのですよ。
エレノアには負担をかけてしまっています。
私が順当に家督を継げれば、全て丸く収まっていたのです。
急に家督を継がねばならなくなった割には、よく頑張っていますよ」

「お姉様!
わああああん」

段々腹が立ってきました。
エレノアの努力と責任感。
この苦悩に比べて、糞王と下劣王太子の無責任ぶりに耐え難い怒りを覚えます。
このまま自然に任せるのが嫌になりました。
もっと積極的に報復してやります。

ですが今直ぐは駄目です。
残虐な場面をエレノアに見せるのは精神的に悪いですからね。
またエレノアが寝静まった頃に、牙鼠を使って思い知らせてやります。
それに直ぐには殺しません。
じわりじわりと恐怖を味合わせてやります。
そして最後は、殺してくれて願いたくなるくらいの殺し方をしてやります。


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