「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第13話

私は十三人を連れてもう一度国境を越えました。
何もせずに皇国を出ることになりましたが、仕方ありません。
十三人を皇国には置いておけません。
未開地の中に安全な場所を探して、そこで暮らしてもらう事にしました。

普通ならとても危険な事なのですが、レオがいれば大丈夫です。
レオにマーキングしてもらった場所は、並の獣が入ってくることはありません。
レオはとても強い子なので、狼や熊、虎や豹も怖がって近づきません。
レオのマーキングを無視できるのは、魔境の魔獣でも相当強力な奴だけです。

「食べ物はここにある獣を食べてください。
この洞窟の周り、木に印をつけた所までは、獣が入ってくることはありません。
万が一私の戻るのが遅れるようなら、木の実や果物、野草や茸を採って食いつないでください」

本当は隣国に村に入った方が安全なのかもしれません。
この人達から見れば、隣国の奴隷になった方がマシなのかもしれません。
でも私は、この人達が奴隷になるのを見たくないのです。
私は奴隷にされる運命から逃げきれたことで、人生をやり直せました。
今こうして堂々と生きていられます。
この人達にも、そのような機会が与えられればいいのにと思ったのです。
特に、未来ある子供を奴隷にするのが嫌だったのです。

寒村の村人十三人なら、二ケ月は喰いつなげるだろう獣を狩り与えました。
保存がきくように、皆で集めた柴で燻製にしました。
私とレオが狩りをしている間に、果物や木の実、野草や茸を集めさせました。
洞窟暮らしに必要な道具は、捨てる村から持ち出しました。
ろくな道具は残っていませんでしたが、生きていくだけなら何とかなるでしょう。

「おねえちゃん、ありがとう」

「「「「「ありがとうございました!」」」」」

私が再度皇国に入ろうと、村人の住む洞窟を後にしようとすると、子供がお礼をいってくれ、続いて十二人の大人達がお礼を言ってくれました。
まだ誰の名前も聞いていないことにようやく気がつきました。
私も必死だったのかもしれません。
名前を聞くという事さえ思いつかないような、常軌を逸した精神状態だったのかもしれません。

「そんな顔をしない!
必ず戻るから!
貴方達を見捨てる事は絶対にないから。
だから諦めないで。
絶対に投げやりにならないで。
二カ月で皇国を何とかするから」

そうです。
ここの食糧が尽きる前、二ケ月以内に皇国を何とかしなければいけません。
アラベラさえ殺してしまえば済むのか?
多くの重臣を皆殺しにしなければいけないのか?
その調査から始めましょう。

二ケ月で何とかすると思い詰めては失敗しますね。
時間がかかったら、多くの人を死なせてしまうでしょう。
失敗してしまったら、それこそ皇国に住む全ての平民が死ぬかもしれません。
慎重に動くことにしましょう。

「「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く