「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第9話

「よう、聞いたか?」

「なんだい?
何か起こったのか?」

「エヴァンズフリーク皇国の皇帝が死んだってよ」

「へえ、そうなんだ。
だがそんな事、平民の俺達には関係ない事だろ?」

「それがそうでもないんだよ。
どうやら暗殺されたようなんだよ」

「なんだと?!
皇帝が暗殺されただと?!」

「ああ、どうやら皇太子妃のアラベラがやらしたらしい」

「ちょっと、面白そうな話ね。
私にも聞かせてよ。
一杯奢るからさ」

私は忘れていた故国の情報に驚きました。
まさかアラベラが皇帝を暗殺するとは思ってもいませんでした。
まあ、でも、あのアラベラとジャスミンです。
事が皇太子妃争いで終わるはずがなかったのです。
彼女らの欲望の終着点は、皇后ではなく女皇帝でしょう。
それくらいの事はやってのける女です。

私は最初に話を聞いた男からだけでなく、色々なところから情報を集めました。
これでも冒険者の端くれです。
大したことのない小魔境ですが、そこの冒険者ギルドでトップを張る冒険者です。
色々と融通を利かせてもらえます。
まあ自分の実力ではなく、レオの力ですが。

皇国から追放されて二年。
生きるために最初は盗賊になりました。
でもレオが治癒魔法が使える事を知り、私も治癒魔法が使えるので、冒険者の道を選びました。
私は聖女と呼ばれたこともあるのです。
他に生きる道があるのなら、盗みを続けたくはありません。

最初に入った冒険者パーティーは最悪なところで、私を襲おうとしました。
その当時はまったく戦う力のなかったので、レオがいてくれなかったら、自害しなければいけない事態になっていたでしょう。
ですが私には、レオという強い子供がいてくれました。
私を襲うパーティーメンバー四人を喰い殺してくれました。

私は冒険者ギルドに嘘の報告をしました。
私を襲おうとしたことは正確に報告しましたが、彼ら四人を喰い殺したのは魔獣だという事にしました。
冒険者ギルドは信じてくれました。
いえ、信じるほかありませんでした。

なんといっても、冒険者ギルドが紹介したパーティーが私を襲ったのです。
職員とパーティーが結託して、女性新人冒険者を襲っていたなんて噂が立つと、冒険者ギルドの信用信頼が地に落ちてしまいます。
まあ、翌日に職員の一人が行方不明になったのは、私の関知しない事です。

それからは単独の冒険者として登録しました。
とても他の人間と組む気にはなりませんでした。
単独とはいっても、レオという頼りになる愛息と一緒です。
レオを使うテイマーという事になっています。
レオは親の私が畏怖を感じるくらい強い子の育ってくれました。


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