「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第7話

「キュウ!」

「どうしたの、レオ?
なにが言いたいの?

「キュウ、キュウ、キュウ」

私の逃亡生活は、思っていたモノと全く違うようになりました。
初日は逃げるために、いえ、生きるために必死でした。
その日のうちに、翅蜥蜴のレオと出会いました。
それが、私が馬車の中で考えていた逃亡生活を一変させました。
ぜんぜん寂しくないのです。

レオはとても甘えたさんで、四六時中すり寄って来ます。
甘えて鳴くので、独り言ではなく会話になります。
まあ、姿が消えているのに声が聞こえると拙いので、姿を隠してくれる香水をつける機会が減りました。

問題は私を攫おうとした黒幕と手先です。
入国証明書は持っていますが、それには私の素性が正確に書かれています。
城壁がある街には関所があります。
入国証明書がないと入ることができません。
ですが見せると私の正体がバレます。
逮捕の命令が出されていたら、万事休すです。

だから少しでも大きな街には入りませんでした。
五百人程度の街でも、ちゃんと城壁で守られています。
百人程度の寒村でも、獣除けの城壁で囲まれていますが、さすがに入国証明書の提出や確認までは求められません。
そんな寒村ばかり選んで、食糧の補充と寝床の確保をしました。

私は徐々に旅に慣れてきました。
寒村で近くの状況を聞き出して、同じように安全な寒村を聞き出しました。
急ぐ旅ではありません。
一番大切にしなければいけないのは安全です。
全ての村が善良だとは限らないのです。

村人の中に幾人かの悪人がいるという訳ではありません。
村全体で旅人を襲って持ち物を奪い、旅人を奴隷にして売るのです。
残念な事ですが、バークレー王国にはそういう村が結構あるそうです。
そうしなければ生きていけないという哀しい現実もあります。
だから急がず安全な村を教えてもらいながら旅をしています。

「正直この先の村には立ち寄らない方がいい。
この先の領主は強欲で、領民は飢えに苦しみ良識を捨てなければ生きていけない。
旅人を襲い物奪い奴隷を手に入れ、何とか暮らしている状態だ。
領都や主要な街でも、抵抗できない旅人は宿屋で襲われる。
お嬢さん一人ではとても無事に通過できないと思う」

「ありがとう、おじさん。
道を戻って大きく迂回する事にするわ。
でも確認しておきたいのだけれど、その先の領主はどうなの?
同じような強欲な領主で、領民が良識を放棄しているの?」

「それは分からん。
俺たち庶民が分かるのは、自分の村と周囲の村の事だけだ。
お嬢さんは今迄通り、よく話を聞いて、安全な村だけを選んだ泊まるべきだ」

なるほど、そう言う事ですね。
それしか方法はありませんね。
でも、早く他の国に行きたいのも確かです。
意を決して突破するか、それも迂回するか?

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